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信長さん  作者: はいむまいむ
第六章 信長、消される
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クリスマス特別編 聖なる夜に・・・・・・ 3

これでクリスマス特別編は完結です。

次回は通常編に戻ります

「ただ、信長様ぁ……雨が傘で防げないほど強く降っておりまするぅ……」

「それはもうすでに知っている!」


こんな雨の日に傘をさしながら雨に打たれるというのも、何か宗教的なものに思えてきた。


Tシャツは濡れ、少し肌が透けて見えるようになる。こうなると、偽美希の肌、下着も透けて見えるようになると思い、少し淡い期待をして見てみると「いや~こんな雨の日ですから、防水性のシャツを着ていて正解でしたよ、信長様!」としっかりと水をはじくシャツの姿が見てとれた。


「……そうか」

「はい!」


雨の日に、そんな元気でいられるのであればそれでいいさ。何、雨に濡れることは慣れている。ただ、なぜだか洋服以外にも何か違うものが濡れてしまった気がする……よくわからないな。


Mのマークのハンバーガー店に着いて、ハンバーガーと温かいコーヒーを頼んで二階へと移動する。二人別々に頼んだわけで、後からやってきた偽美希は二重バーガーと期間限定と銘打たれたLLサイズのコーラを頼んで持ってきた。本気で食べて飲むつもりらしい。


暖房がしっかりとつけられている店内は食べ物を咀嚼していたとしても眠気が襲ってくる。ただ眠気が襲ってきても偽美希の女子とは思えないほどの食べっぷりを横でやられてしまっては、眠気なんて吹っ飛んでしまう。食べっぷりというのは、人を恐れさすものの一つだと考える。


さて、偽美希が「ふぅ……」と二重ハンバーガーとLLサイズのコーラを飲み終わって息を漏らしたころ、俺は楽しいクリスマスを過ごすために、今日の行き先を決め終わった。


計画としては、今の時刻が九時過ぎであるから十時まで近くの赤色のゲームセンターで自分がモデルになっているゲームをプレイしてにやにやとした後、これまた近くにあるアニメ漫画専門店に行き中を物色して、お昼になったらいつもはいかない霊長類マークのカレー屋に行く。ここまでは、初心者秋葉原訪問者が行くようなルートだ。なぜ俺がそんなことを言うのかと言うと、このルートと言うのが凛監督に言われたルートだからだ。


「いい、生贄君? 初心者が行くといっても別に行ってはいけない場所じゃないのよ。ただ、無駄に混んでいるから、不必要にいかない方がいいのよ。昔はああいう店とかが少なかったからわざわざ出てくる必要があったけれども、今は別に近くで買えるはずなのに、なんでここに来るのかしらねぇ……」


と、愚痴を言われたことを思い出した。


さて、思い出したのはいいのだがやることをやらなければ考えた時間が無駄になってしまう。


「偽美希、もう出ようか?」

「えぇ……まだ外は雨を降っていますよぉ? それに、ちょっと眠くなってきましたしぃ……」


いつもは無駄に従順な偽美希が、こんな時に限って反抗してくる。確かにここはあったかいし眠たくなってきた。外はもちろん雨が降っている。だけれども、そんなことを気にしていたらいつまでたっても外に出れなくなってしまう。


「いいからついてこい」

「……分かりました」


腹が立つわけでも、イラついたわけでもないけれども仕方がない。偽美希を動かすには、少し強い言い方をしないといけないからな。



――― 


そこから俺たちはさっき言ったルートを回り続け、時折偽美希が近くを走る痛い車を見て「なんということだろうか……」と絶望していたけれども、ぶっちゃけそんなのはどうでもよかった。お昼を食べながら午後の予定を考えていると、隣である話を耳にした。

その話をしていたのは、男二人組。どうも、このクリスマス悲しく過ごしているに違いない雰囲気だ。


「おい、後で爆発テロを神田明神の方でおっぱじめるらしいぞ」

「お! あれをあそこでやるとは、神様もお怒りになってしまうだろ?」

「いやいや、今日はクリスマスだぞ? お三人がただって今頃チキンを貪り食っているに違いないさ」

「それにしたって、今日は雨だぞ? 爆発テロだって、人が集まるはずがねぇ」

「過激派というものは、雨でさえ武器に変えてしまうはずさ」


なんとも物騒なことを言っている連中だが、彼ら二人からは悪気というものは感じられない。むしろ幸せそうな雰囲気が漂っていた。彼らが首謀者じゃないから、そんな雰囲気なのかもしれないが、それにしても恐怖を感じられなかった。肝が据わっている感じもなかったから、そういうことだろ。

俺以外に、偽美希もその話を聞いていたらしく「信長様後で、神田明神に行ってみましょうぞ」と口の周りを汚しながら行ってきた。大丈夫、しっかりと紙ナプキンで口元を拭いておいたから。


彼ら曰く、その爆発テロは午後六時に行われるらしくそれまで何をしているか考えてしまう。どちらにせよ気になるのはなぜ爆破テロでは無く爆発テロなのかということだ。


――― 


雨降りしきる中、俺ら二人はなぜか新御茶ノ水の方角へ歩きだした。しかし、やることもなく方向感覚もなかったのでなぜか神田にたどり着いてしまい、それではだめだということで末広町の方角へと歩きだした。さすがに末広町に関してはホームグラウンドということもあって、すんなりとたどり着くことが出来たが、それでも時間は余ってしまう。ということで秋葉原の本当の電気街の方や神様と言った怪しい工具店や、ラジオ会館に行ったりして何とか午後六時になり、神田明神へと着いた。


――― 


『えー、皆さまお集まりいただきまして誠にありがとうございます。お騒がせしていますこと、まずは謝罪させてください。申し訳ありません』

『謝罪なんていらねーよ!』

『さっさとおっぱじめよーぜ!』


神田明神に着くとマイクを持った男が話をしていてその周りを数十人の男たちが囲んでいた。中には女の姿もあって何やら闘志にあふれていた。


そして、そのあふれる闘志を見て俺の相方である偽美希は「うぇぇーい!」と声を荒げていた。


まだ雨は降り続いていている。ただ、空の色は暗くなり怪しさはどんどんと増していく。普段であれば明るくなる宮もなぜか今日に限っては明るくならかった。


『本日は、すべて貸し切らせていただきました。今は我々のものであります!』

『うぇぇーい!』


集団多数が、奇声をあげている。中心人物として偽美希が主導しているのだから不思議なものだ。


マイクを持った男は片手に持っていた傘を放り投げ、それに合わせて周りも傘を投げた。もちろん偽美希も同じように。そして、マイクを持った男は


『聖なる夜とはいえ、我々は生き続けなければならない。たとえこの日本中すべてがピンク色に包まれようとも、我々は一筋の光、一筋の希望を持たなければならない!』

『その通りだ!』

『しかし、我々の希望と言うのは普段であれば具現化しないものである! しかし、今宵は一味違う。聖なる夜は、我々にも夢を送ってくれたのだ!』


彼はそう言うと、右手に筒のようなものを持ち上げ『さぁ、これを闇夜に投げ込むのだ!』と言って、筒を置いてマイクを置いて袋の中から筒を周りに投げ出した。


『これを地面に置き、火をつけるのだ!』

『えぇい!』


なぜか、返事はすべて奇声だった。そして、投げ出された筒を受け取り全員疑いもせず、筒を地面に置いた。言っておくがここは神社の境内だ。


しかし、火を持っていないようで筒を置いた後おろおろとしていた。


「恐れることはない諸君! 火がなければ生み出せばよい!」


落ちていた木の棒を振りかざし、なぜか導火線に火を付けることが出来た。

木を振りかざしたのは偽美希であり、どういう方法で火をつけたかはさすがの俺でも理解ができなった。しかし、なぜだか火はついてしまった。本当に不思議だ。


そして、導火線は雨なんかに負けることなくどんどんと着火点へと近づいていき、ついに大元に火が付いた!

そして、筒から発射されたのは大きな火薬だった。


『おぉ……』


奇跡的に雨はちょうど上がり、雲も消え空は晴れ渡った。暗い空。聖なる夜に、映し出されたのは、ハートマークにバツマークが描かれたなんとも不思議な形の花火だった。


なるほど、確かにこれは爆発テロだ。


爆発テロに参加していた連中は全員空の花火を見て一瞬息を飲み、そして叫喚の渦に巻き込まれていった。


騒がしい集団から一歩はずれて、俺は花火が消えた夜空を眺めてみた。


すると、予報でも言われていなかったことが起きた。


「おぉ! 星が……」


確かにクリスマスらしいとは言えない一日だった。だけれども、夜それもこんな星降る夜に、いつもと違うことをしてみる。


これというのは、クリスマスらしく過ごすことよりも楽しいことなのかもしれない。それに、俺らしいと思うからな。


「さて……」


なぜだか分からないけれども、偽美希が集団の二次会に誘われていた。そして偽美希も「同士のためなら」といく気満々だ。どうやって、偽美希を連れて帰ろうかまた考えなければいけないな。

クリスマスはどうも考えることが多い。サンタもきっとこんな気分なんだろうな。


久しぶりに長く書いてみました。

オチは無理矢理に落としました

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