第二百十九巻目 確実性があり規則性があり安定的なもの
「ここで一つ問題だ信長君」 彼女は微笑みながら問題を出す。
「なんですか?」
「敬語使わない!」
「……」
「……まぁ、適度な敬語は時にしてフレンドリーといえよう」
「分かってくれれば幸いです」
まぁ、少し話が脱線した。
「信長君、君はなぜこの時代が百年後の時代だと理解したのかい?」
「それは、テレビで書いてあった西暦と日付を見たからです」
「ということはテレビで見た情報というのが、君の思考を確定しているというわけなんだね?」
「はい、そうですね」
「うむ……まぁ、それが普通だといえるだろう」
彼女はどうも難しい顔をしている。微笑みながら難しい顔をしているのだから、これほど不思議な表情はない。真似は出来ないと思う。
「少し考えてみてほしいんだが、もし君がテレビがなかったとしたら君はこの時代をどんな感じでとらえるだろうか?」
「さぁ……未来の都市だと思うんじゃないでしょうか?」
「別世界に来てしまったと錯覚することはないかい?」
「……」
確かに、俺はこの時代が百年後の世界だとテレビで認識できたからこの時代が百年後の世界だと思っているけれども、これが何の情報もなかったら確かに別世界に来てしまったと思ってしまうかもしれない。
「実を言うとね、時間というものは確実性があり規則性があり安定的なものだと考えられているけれどもそれは違うんだよ。まぁ、こんなこと信長君に言っても仕方がないんだがね」
「はぁ」
「だから、人っていうのは時間を目視化することで時間というものに絶対的な信用を与えることが出来るんだ」
「そうなんですか」
「例えば……信長君、君は何をしているときが一番楽しいかい?」 彼女は突然聞いてくる。
「そうですね、自分の……いや、アニメとか見てるときは楽しいです」
「そうか! それはいい趣味をしている。それじゃあ逆につまらないと感じるときは何だい?」
「つまらない時ですか……」
つまらない時というのは、考えてしまうと限りがない。そもそもつまらないてことを考えてしまうと、すべての物事がつまらなく感じてしまうからだ。それでもつまらないことを考えるのであれば、やはり一番に上がってくるのはこれぐらいだろう。
「嫌いな奴と一緒に仕事をすることぐらいですかね。最近はそんなことはなくなってますが」
「なるほど……君はそれをつまらないと認識するのか」
「はい」
「いやぁ……君は本当に面白い奴だ!」
そう言って、彼女は高笑いをして俺の肩を叩いた。
「それじゃあ聞くが、楽しい時とつまらない時だと時が経つ速さが違うとは思わないかい?」
「……確かに、体感する速度は違ってくると思います」
「君が屁理屈野郎じゃなくてよかったよ。それじゃあ、時の速さが違ったとしても君が見ている時間はたとえ楽しい時であってもつまらない時であっても一定だろ?」
「そうですね」
「つまり、君がいくら時が経つのが早く感じても、目視している時間は同一であるということだ」
「……?」
ちょっとずつ話が難しくなってきたな。
「ただ、その同一というのはさっきも言った通り目視している時間だということが前提条件にある。つまりは、体感してる時間は君が思っている通り変わっているということだ」
「?」
「つまり、時間というのは、体感時間に関していえば確実性があり規則性があり安定的なものというものでは無くなってしまうのだ」
……? ダメだ、話についていけない。




