第二百十八巻目 半同一人間体
ただ、見知っていた人であるけれどもその人はいつもの感じではなく、全く別人のような感じだった。
「あなたは、一体?」 俺は彼女に尋ねる。中に居たのは女性だ。
「逆聞くが、君は私が誰だと思う?」 彼女は笑いながらそう言ってくる。
「誰だと言われても……それは…………美希じゃないか」
「確かに、君にとっては美希かもしれない。だから正解と言ってあげたいところだが、残念ながらペケしかつけられないな」
彼女は美希だ。確かに、彼女は美希でそれも偽美希ではなく本当の美希と言った感じだった。ただ、その美希に大人の感じが足されているのが今目の前にいる彼女だ。
彼女は微笑みながらそう言ってくるものだから、なぜだか諭されている気分に落ちってくる。不思議なものだ。
「信長君。君はジョンタイターという人物を知っているよね?」
「ジョンタイター……ジョンのことですか?」
「イグザクトリー! さすが君は覚えがいい」
「そりゃあ、ずっとあいつと一緒にいれば……でも、なんであなたがあいつの名前を本名で?」
俺がそう言う風に尋ねると、彼女は驚いたような顔をして、そのあと少し悩み「そういえば、君の知っている美希は彼のことを本名では呼ぶことはなかったねぇ」と言って「反省反省」と小さく口にしていた。
「私はね、君が知っている美希であり美希ではない。同一人物であるが、同一人物ではない。そういう特異な人間なんだ」
「特異な人間?」
「そう、私たちは……もう少し立った未来では私のようなものを半同一人間体という風に言っている」
「?」
「まぁ、さすがの君でもここまで訳の分からないことをたくさん言われた、訳が分からなくなってしまうだろう。混乱させてしまったのであれば謝罪する、すまない」
「いえ……」
難しいことでは無かったけれども、複雑なことでちょっと混乱話していた。ただ謝罪されてもあれなので、あれしておいた。
「とりあえず、私のことは藤巻とでも呼んでいてくれ。本名は藤巻美希、君の知っている美希と同じ名前さ」
俺の知っている美希は、阿多土美希。いったい、これは?
「さて、まずは君がなぜ百年前の世界からこの時代へ送り込まれたのかを説明しなければならない」
「? なんで、俺が百年前から来たことを知っているんですか?」
俺は必死になって彼女に尋ねるが、彼女は俺の話を聞きながら笑いそうになっていた。
「君は、いつもそんな美希に対して敬語口調なのかい?」
「いや……そういうわけじゃないんですけれども」
「じゃあ、私ともフレンドリーに行こうじゃないか! 私はどうも堅苦しいのが苦手なんだよ」
「そうですか……」
「ほら、そう言うのがダメ! 信長君!」
「は、はい」
何だかペースが崩されるなぁ…………。




