特別編 東京スーパーカーショウの事件簿 第四話
「土下座なんてやめてください」 とりあえず、やられてるこっちがこの場所だとものすごく恥ずかしいので、お願いをする。
「いえ、それでは私たちの謝罪の念が最大限に伝えきれません」
「謝罪の念って……謝罪は念じる物じゃないですよ」
ただ、俺たちの思いが伝わったのか土下座をやめてくれて「それでは、早速ですがご案内をさせていただきます。本当に先ほどは申し訳ございませんでした」と言いながら案内を始めてくれた。偽美希はなんかよく分からない表情を浮かべていたけれどもちょっと口元が二やついていたから案内が始まって楽しい気分なんだろうな。
「最初にご案内したいのは、会場内では無く関係者専用のスペースです」
どうやらまずは、俺たちが関係者ということで関係者専用のスペースを案内してくれるようだ。案内の指揮を執っている男の人がそう言うと偽美希は静かに俺の手をつかんできた。手をつなぐというところまではいかないけれども、それに近い状態で偽美希の手の冷たさがじかに伝わってくる。建物の中に入って時間が立っているけれども、女の体というのは寒さに弱いのだろうか?
「信長様」
「どうした?」
「私たちは、会場に入れるんですよね?」
小声で、震えた声で、偽美希は俺に聞いてくる。
「関係者専用のスペースで終わりってこともないだろう。希望を持て」
とりあえずそう言う風に言っておいた。そうすると、偽美希の手の温度が少し温かくなった。
関係者以外立ち入り禁止とでかでかと書かれた看板の横を通り、黒い布で仕切られたところをくぐり、少し暗い通路を通り明るく広いところへと出る。
「ここは、新東京メッセ一番ホールを貸し切っている関係者用のスペースで、休憩スペース商談スペースと関係者限定の展示を行っています」
「関係者限定?」
関係者限定に興味を示したのは俺では無く、偽美希だった。今の今までだんまりを決め込んでいた彼女は、案内の人の言葉を聞くなりすぐに質問をした。
「はい、関係者限定です。関係者限定のスペースでは一般展示されないコンセプトカーの展示や、非公開の資料などを特別に公開しています。ただ、全般的に非公開となっていますので写真撮影の方は禁止となっています」
「なるほど」
「興味がおありですか?」
「それはもちろん」
「良ければ専任の案内スタッフをご同行させていただきますが、どうなさいますか?」
「その専任の案内スタッフというのは、どういうことをしてくれるんですか?」
「資料やコンセプトカーについて、より詳しくご説明しながら案内をしていきます」
「……それでは、お願いしたい」
「わかりました。では、まず休憩スペースの方へご案内してから、専任の案内スタッフを向かわせますので、よろしいでしょうか?」
「うむ」
なんで、こんなにしゃべれるんだろうと思ってしまうほど、彼女の饒舌っぷりはすごかった。




