第二百十五巻目 前編 研究所はここにはない
というか、スマートフォンを起動したと同時にメールとかSNSのメッセージの受信が行われた。この時代にもまだサービスが終了していないのだから、それほど生活に密着しているのだろう。……俺は何を言っているんだ?
SNSを起動させて内容を確認する。メッセージの受信日時は百年前の今日になっている。差出人はミスター安藤、鈴木さんの二人でミスター安藤からは「緊急の用が出来たので、今日は休みにしてくれ。申し訳ない」と来ていて、鈴木さんからは「もし今日暇なのであれば、少し用に付き合ってほしい」と来ていた。送り返せるのかと思って、「今日は無理ですね」と鈴木さんに送ってみたけれども、やっぱりエラーが起きてしまった。過去の時代にはメッセージが送信できないようだ。
そのメッセージの中に、一つだけ不思議なものがあった。そのメッセージの送り主いうのはジョンで、差出日というのが今日、つまりは2115年の10月8日だ。
メッセージにはこんなことが書いてあった。
『ノブ。あなたは今、しっかりとこの状況を理解出来ていますか? もし、理解が出来ているのであればこの前ミスター杉原と来た研究所に来てくれませんか? そこには、私はいませんが、あなたの良く知っている人物がいますから』
一体、これはどういうことなんだろうか? ジョンが、こんな意味深なメッセージを残すなんて……。本当に、どういうことなんだ?
奴の性格からしてこんな遠回しな言い方をするわけもないし、もし遠回しに言うとしてももっとうざい周り口調になるはずだ。
本当に、これがジョンが送ったものなのか疑問に思うし、もっというと俺がよく知っている人物というのは誰なんだろうか? 俺の知っている、現代の人間はごくわずかだし……。
ただ、行くところもないしやることもない。安全に過ごすんであればここにいるのが一番なんだろうけれども、何も行動しないと何も起きることはない。よくわからない時代で、何も起きないということは、苦痛であり行動を不能にさせる。
「しかたない……」
とりあえず、ジョンが送ったっぽいメッセージを頼り、その場所に行くことにしよう。




