第二百十二巻目 思考停止
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いつもであれば朝起きるときはすんなりと起きることが出来る。昔、下の奴らにも「お館様は目覚めが本当に素晴らしいですね」と言われたことがあるほどだ。この時代に来てからもそれは変わらず、ジョンからは「私は低血圧で起きれないですから、ノブのそういうところは尊敬しますよ」と言われた。尊敬するんだったらもっと違うところを尊敬してもらいたいところだけれども、それくらい言われるように俺は寝起きだけはいいんだ。
それなのに、今日はなぜかすんなりとすぐに起きることが出来なかった。ただ眠いとかそう言うわけじゃないし、体がだる重いから起きれないという訳でもない。あえて言うのであれば、起きれないから起きれないんだ。物理的なものでは無くて、それは精神的なものから来ているのかもしれないけれども、ただいえることと言えば起きれないという事実だけだ。
そもそも、昨日は色々とおかしい一日だった。ミスター安藤は突然消えてしまうしジョンと偽美希は帰ってくることはなかった。もちろん寂しいということはないけれども、つまらないというのはあった。
ただ、それだけれであればいつもと変わらないだろう。いつもというわけじゃないけれども、そう言うことは時々ある。そのたびにこんな起きれなくなってしまうんであれば、別に今俺がこんな起きれないことを気にするはずもないだろう。なぜ、俺が今こんなにも起きれないことを気にしているかというと、それがいつもと違う状況だからだ。
誰だって違う状況に陥れば焦るだろう。焦りが起きるのを妨げているのであれば、俺はそれを否定せず肯定をするだろう。俺は今、猛烈に焦っているんだ。ただ、焦りは起きれないところから来ているはずなのに、その焦りのせいから起きれなくなっているとは全く不思議なことだ。
しかし、起きなければいけない。それは、ミスター安藤が来るからだ。
だから、無理やりにでも起きて準備をしなくてはいけない。
歯を磨いて、飯を食って、顔を洗って、勉強の準備をする。それをしなくてはいけないということは分かっているけれども、どうも体が動いてくれない。自分に鞭を打つのは嫌だし、基本的には無理やり動きたくない。
でも……
「まあ、起きなきゃいけないか」
自分を納得させて起きるしかないのだ。
眠っているときは電気を消して、カーテンも閉めているわけだからとりあえず朝ということでカーテンを開けてみる。そして、換気を行うために窓を開ける。眠い目をこすりながら、涼しい風を受けながら、外の景色を見てみる。
「……?」 ここで、思考停止。
一体、俺は何を見ているというのだろう? 俺は、まだ夢の中に居るんだろうか?




