第二百五巻目 自分の存在
自分が分からなくなった時というのは何をしてもダメな時だ。それは、生きてきた経験から分かる。自分が分からない時に行動をすると、結果としては良好なものが発生する可能性はないとも言えないけれどもほとんどの場合は劣悪な結果になってしまう。そして自分はその行動を失敗とみなして、「なぜ自分がこんなことをしてしまったのか」と後悔をして、さらに自分が何なのかが分からなくなってしまう。
だから、自分が分からなくなった時はまず何もしない、何も考えないというのが大事になってくる。
ただ、何も考えないというのはかなり無理がある。人間、たとえ自分が何者か分からなくなってしまっても、腹は減るし喉は乾く。便所には行きたくなるし風呂に入りたくなる。本能的な部分で何かを考えてしまうようになってしまうんだ。
だから、あえて何も考えないということを忘れることがこういうときにはさらに重要になってくるんだ。そして、忘れた先に見えてくるものというのは自分の好きなことや、自分がやりたいことというさっき言った本能的な部分。その本能的な部分を行動に移すことで、人というのは自分というものを見つけることが出来るんだと俺は思う。
そして、俺は今の今までそんなことを考えていた。これも、本能的な部分で考えた買ったことなんだろうな。
リビングに戻り、座ってお茶を飲む。急須に入れていたお湯はとっくに冷めていて、急須から出てきたのは冷めきったお茶だった。
ただ、今の俺にはちょうどいい温度でどこか心地よさも感じた。
ふと時計に目をやってみると針はとうに22時を超えていた。普通であればジョンが帰宅して、さらに偽美希も帰宅しているはずのじかんだ。それに今日は二人で一緒に行動しているはずだ。
「何かあったのかな?」
気にはなったけれども、とりあえず今日のところは深く考え内容にしよう。深く考えて息詰まったら嫌だからな。
結局ミスター安藤が帰ってくることはなかったし、勉強は出来たにせよそれ以上に良く分からないことが増えた一日だった。正直なところ、これ以上謎を増やしたくないとは思うけれども、なんだかもっと増える気がするんだよな。俺が知らないところで誰かがなにか大きなことをしている。それで、俺が迷惑をこうむっている。絶対にそんな感じだと思う。
たとえばジョン。あいつが何か隠し事をしているんであれば、なんとなく理解はできる。あいつは隠し事が下手だからすぐに俺にばれてしまうからな。だから、なんとなく分かるんだよな。あいつが、今なにか大きなことをしているということが。
あいつの仕事が時間関係で未来人だとかいっていた。それで俺は突然この未来にやってきた。ジョンは元の時代に戻る方法がないとかいっていたけれども、本当はあるのかもしれない。だけれども、ジョンには俺を帰せない事情があってこの時代にとどめてるのだとしたら、俺は一体どうすればいいんだろう。正直、ジョンの手助け無くして時を超える方法はないと思う。一番いいのは、たとえ黒幕がジョンだったとしてもその時が来るまで待つということじゃないのかな。




