特別編 東京スーパーカーショウの事件簿 第二話
東京スーパーカーショウっていうのは、東京都語っている割には東京にない千葉の新東京メッセで行われている車の展示会で、世界的な企業が一様に集まっている。
昔は本当にスーパーカーのみの展示だったらしいけれども、今ではコンセプトカー(まぁ、スーパーカーっていったらそうだけれども)とか普通の乗用車、もっというとバイクなんかも展示してある総合モーターショウになっている。ミスター安藤からもらったパンフレットにはあのレーサーのトークイベントがありますよ! とか書いてあるけれども、正直あのレーサーの“あの”っていうのが分からなかった。
偽美希が「信長様、私にもパンフレット見せてください!」と興奮気味で言ってきたので、渡してあげると「えっ!? あの人が……」と震えながらパンフレットを見たり俺の顔をのぞいたりしていた。顔を真っ赤にしているところを見ると本当に興奮しているらしい。
「スーパーカーショウ。楽しみか?」 俺には偽美希に聞いてみた。
「当たり前じゃないですか! あんなすごいところに行けるんですから、信長様ももう少し心を震わせた方がいいですよ!ここから先は戦場では無く、楽園なんですから!」
戦場も楽園も俺は同じ心持ちで行ってやるよ、と言いたかったけれどもここで偽美希を白けさせるのも気が引けたので「そうだな」と一言だけ言って偽美希を肯定してやった。
新東京メッセまでは、電車で行くんだけれども人が少ないルートがいいとミスター安藤が電車に乗り時刻まで指定してきたので、俺たちはそれに従って動いている。家からはまず秋葉原で降りてそこで日比谷方面に行く地下鉄に乗りこんでどっかの駅で地下鉄に乗り換えて、またその地下鉄の終点で陸の電車に乗りこんでそれでやっと新東京メッセに着く。
俺も初めて地下鉄っていうものに乗ったから驚いたけれども、あんな地下に電車を走らせるなんてどういう神経をしているんだろうね? びっくりしたよ。エスカレーターがどんどん地下に行くんだから、本当に怖いと思ったよ……。
でも偽美希は「地下帝国に侵攻してくれようぞ!」と小さな声で顔真っ赤にさせて目をつぶって一人で興奮していたようだから、彼女はかなり神経が図太いんだと思う。俺よりもだ。
ただ、そんな興奮していた彼女もたくさんの乗り継ぎのせいで少し疲れてしまったようで、新東京メッセに着く頃には「ふぇ」と歩くたびに息を漏らしていた。
新東京メッセに着くと、まだ会場前なのでかなりの人が列を成していた。
「えぇ……この列に並んで待つのですかぁ……信長様ぁぁ」と、弱気を漏らす彼女。
普通であれば「我慢して待つ。そして、好きなものを堪能しよう」と励ましの言葉をかけるけれども、今回は少し状況が違う。
「いや、待たないよ。違う入り口から今から中に入るから」
「?」
「これは、関係者用のチケットなんだ」
そう。ミスター安藤からもらったのは関係者用の特別なチケットで、一般であれば並ばなければいけないのをさっきも言った通り並ばずに入ることが出来てしまう。それも、開場する前にだ。もっというと、関係者ということで関係者用の休憩スペースも使えて、食事も出る。こんなすごいチケットは、初めてだ。
「それならそうと、早く言ってくださいよ!」
初めて偽美希に怒られた。いつもであれば下でに出てくるのに、こう言ってくるっていうことは、本当に怒っているんだよな。
「ごめん」
「本当ですよ!」
ぷりぷりとする偽美希の手を引いて、とりあえずスーパーカーショウの中に入ることにした。このまま外にいるのもあれだからな。




