百九十八巻目 If
「俺の扱いが……おまけ?」 偽美希は、自分のぞんざいな扱いに落胆をした。
それを見てジョンは、励ますつもりでこう言った。
「おまけっていうのは表現の問題です。あなたにもちゃんとした役割はありますよ! たぶん」
結局祖の言葉は偽美希の心をえぐる形になった。偽美希は、涙こそ流さなかったが、悔しそうな顔をして、今にでも泣きそうになっていた。
――
「そもそも、無限に作られた時間軸と時空軸の研究の目的というのは先ほども言ったように様々あったんですが、主にされていた研究というのはIf計画に基づいた研究です」
「いふ計画?」
「そうです。If、つまりはもしもの研究で、もしも、この世界の理論では無い世界であったら、人類や地球はどんな風に変わってしまうのかというのを、観測し成果を上げるものでした」
―――
最初のうちは、今までプログラミング上でしか動かすことができなかったものを現実空間でシミュレートできると研究者にもてはやされていたIf計画というものでしたが、最盛期になると研究者はシミュレートするよりも世界そのものを現実にしてしまうことを意識し始めたのです。ここで、あなたは一つ疑問に思うでしょう。現実のものにしてしまうといっているけれども、それだったらIf計画の最初のころはどういう状況でシミュレートしていたのかということです。If計画が始まった最初のころは、まだ実際の現実の時間軸に付け足す感じでその研究が行われていたんですが、最盛期になると実際の現実の時空軸に付け足すのではなく、完全な時空軸と時間軸に世界を作り、そこでシミュレートをすることにしたんです。
そして、研究者たちは別世界のシミュレートを現実の時間軸に近づけてシミュレートをしようとしました。そこで生まれたのが、“Ifネットワークシステム”です。これのせいで、あなたやノブ、そして私がこの時代に来るはめになってしまったんです。
―――
「ほーん」
「……なんですか、その適当な流しは」
「ぶっちゃけていうと、かなりどうでもいい」
「えぇ……」
「もう、その話しなくてもいいぞ。俺、そこまで賢くねぇから覚えられねぇし、聞いたところで何も思わないしな」
「そうですか」
偽美希は、コーヒーカップに入っていた最後の一滴を飲み、「それに、なんか分かった」とジョンに言った。
「何が分かったんですか?」
「お間が胡散臭い奴だってことが」
「……それが分かれば、今日話したことも無駄になっていないということですね!」
ジョンは笑って、偽美希にそう言った。




