百九十四巻目 前編 すべてはお見通し
今回は前後編ということで、
「早速君に、文章題の解き方というものを教える。いいかな?」
「はい」
「よし」
俺が返事をすると、ミスター安藤は、バッグからルーズリーフを取りだして何か文を書き始めた。
「―――よし。この文章を例にして、問題を解いてもらう」
ミスター安藤が書いた文章はこうだ。
―――
この世界には様々な言語が存在する。日本語、英語、フランス語、中国語、韓国語、イタリア語……それぞれの言語はほとんどが完全に独立しているわけでは無く、どこかにルーツがあったり、誕生した時期が同じだったりしている。
しかし、言語というのは世界だけでは無く、日本という国の中にも存在している。それというのが、それぞれの地方に存在する方言というものだ。我々はまず、他国の言語を理解し習得するよりも、地方に存在するものを理解することが大事なのだと思う。
―――
学士
「恥ずかしいが、ほろ酔いだから良く分からない文しか書けなかったが、とりあえずこれでやっていこうと思う。今回は現代文の中でも説明文という分野を理解させようと思う」
「説明文ですか」
「そう、説明文だ。現代文には大きく分けて二つの分野がある。説明文と物語文だ」
「はい」
「説明文というのは文字通り、説明をしている文の事だ。問題の傾向としては、どうして子のような説明を作者がしているのかとか、作者の説明にちかい記号の文章はどれかだとか、答えに適した文を自分で考えて書けだとかだ。分かったか?」
「……はい」
とりあえず、空返事をしておいた。
「君は本当に不思議な奴だな」
「どういうことですか?」
「理解出来ていないのに、返事をするとは中々な奴だな」
「はは……」
どうやら、すべてお見通しのようだ。




