十九巻目 あはははは! あひゃひゃひゃひゃひゃ!
※※※※
「それにしても・・・」
「・・・? どうしたジョン」
ジョンが沈黙を破った。素晴らしい沈黙を。
「いや、よくそんな服を着れるなと思いまして」
「はっ?」
「えっ?」
俺と彼女は突然のジョンの発言に動揺してしまった。
「いや、だってあんな恰好ですよ」
彼女に指をさしながら、にやにやしている。
「かわいい恰好じゃないか」
思わず言い返す。どこがにやにやするポイントなのか? なぜ、そこまでにやにやする必要があるのか? まったく・・・。
「だって、裸同然の恰好じゃないですか!」
いい終わった後、「プ八ッ!」とジョンは吹いて、ゲラゲラと笑い始めてしまった。
まぁ・・・確かに・・・・・・。
「・・・二人とも、そんな変な目線で私を見ないでください」
冷静な声で、彼女に言われてしまった。いやはや、失敬。
「・・・そういえばなんだが」
今度は俺が沈黙を破ってみた。
「何ですかノブ?」
ちょっとだけ気になったんだ。
「いや、どこでジョンと君が知り合ったのか疑問でね」
おっ、はじめて彼女に「君」って言った。これは、発展するな!
俺の問いかけに、ジョンと彼女は「う~ん」と悩み始めてしまった。
「まさか、思い出せないの?」
まさか、な。彼女は忘れているかもしれないけれども、ジョンが忘れるとは到底思えない。男なら誰しも、このような容姿を兼ねそろえている。その姿を見た途端に、「うわぁ・・・」と驚き、その姿は脳裏に焼き付き、一生忘れないことはないだろう。
「いや、忘れてしまったものは忘れてしまいました」
「やっぱり忘れちゃったのかよ。君は?」
「私も・・・忘れちゃいました」
「なんだよ、二人とも忘れちゃったのかよ・・・」
なんだよ、つまんないなー・・・。
※※※※
平成22年7月2日 東京 秋葉原 ビルの間の暗がり
雨降りしきり、地は濡れ、夏特有の湿気が外を包んでいた。そして・・・
「はぁ、はぁ、はぁ・・・」
一人の女が、ここに着いた。
「ようこそ、秋葉原へ」
男の声が、女に届く。
「誰だ!」
女は腰元に手を伸ばすが、腰元には何もなくただ手を振るしかできなかった。
「くそっ・・・」
女は、女らしからぬ渋い顔をした。
「まぁ、そんな渋い顔をする必要はないですよ。私は怪しい人物ではありません。それに、ここは非常に安全なところですよ」
男は冷静に、淡々と話す。しかし、女は信じることはしなかった。
「だ、騙されるか! ここは・・・?」
強気に出るが、あることに気づき戸惑い始める。気づいたこととは
「今あなたは、自分がいる場所について疑念を持ちましたね?」
「!?」
図星だ。女は男に言われたことに驚き、膝をがくんと落とした。
「まさか・・・ここは・・・」
「さすが、あなたは勘が鋭いですね!」
「死後の世界か・・・」
女は、納得したように目を閉じた。
「察するに、私はすでに死んだんだな。あぁ、まぁいいだろう。やりたいことはやった。気持ち晴れやかに地獄にいけるな」
「えっ、ちょっ、はっ?」
「さぁ、連れていけ・・・南蛮人?」
男は勝手に話を進めていく女に驚きを隠せなかった。そして女は、男が南蛮人であることに気が付いた。
「正式にはアメリカ人ですけどもね」
「あ・・・めり・・・・・・か?」
「あぁ、忘れてください。あなたの時にはまだなかったですね」
男は、にこやかに笑った。
「何がおかしい、南蛮人!」
「いや、本当におかしいですよ」
「何がだ!」
男は「ハッ、ハッ、ハッ!」と声を大きくして笑った。
「だって・・・お、おぅ」
「おう?」
「女じゃないですか、あなた!」
男は涙を流しながら笑い始めてしまった。
「あはははは! あひゃひゃひゃひゃひゃ!」
それとは逆に女は青ざめていた・・・。
「私が、おんなだと・・・?」




