百七十九巻目 就職塾
かなり厄介なキャラクターを作ってしまいました。
書くのがかなり面倒です
「この国は世界の流行と同じように資本主義の国だろ?」
「そう……ですね」
資本主義というのは分からないけれども、とりあえず賛同しておこう。
「資本主義というのは実に理に適っている部分だし、私もそのおかげで楽に生きている。その点に関しては非常にいいものだと思う」
「はい」
「だけれども、この資本主義というのは教育というものを壊す一つの要因になっているんだ」
「?」
「君は、学習塾というものを知っているか?」
「……知りません」
「まぁ、知っていたら私みたいなやつに教えなんてこわないと思うから、そうだよな。まぁ、その学習塾というものが、日本の教育をおかしくしている一つの原因といっても過言ではないんだ」
また彼は、「はぁ」とため息をついた。俺は、正座をしながらその話を聞く。
「学習塾というものは、主に二つのものに分かれて進学塾と学習塾に分かれる。進学塾というのは進学するために必要な教科の知識を見につけ、上級校への進学を有利にするものだ。そして、学習塾というのはその時点での学校の教育についていけない、もしくは抜けてしまっている部分があるところに利用されるものだ」
「なるほど」
「もちろん、私は学習塾自体に批判の目を向けるわけでは無い。むしろ学習塾というのは資本主義を象徴する素晴らしいものだとも思っているぐらいだ」
「と、言うと?」
「例えば進学塾であれば、金がある人間ほど進学塾に通いやすいだろ? そうすると、進学塾に言っていない一般庶民と、進学塾に通っている金がある人間とならどっちが進学、つまりは合格しやすいと思う? 一般的に考えて答えろよ?」
最後のフレーズがかなりきつく言われたけれども、まぁこれしか言えないよな。
「普通であれば、進学塾に通っている人の方が合格しやすいと思います」
「その通りだ。進学塾に通っているのだから、合格しやすいに決まっているだろ。だから、富のあるものが、富のある家の子の方が、富のない家よりも進学しやすいということになる。これは、資本主義が生み出した教育の格差だといえよう」
「でも、その格差はいいんですか?」
「うん。その格差というものは当たり前のものだ。この国は資本主義なのだから、金がある奴が上位に立っていなければいけないだろう。それを否定するのであれば、それはこの国の存在を否定することになる。むしろこの格差というのは歓迎すべきものだ。上に立つ者がいて、上に立つ者が金を使い下のものを潤す。それが、資本主義だ」
「なるほど」
「私が、言いたいのは学習塾というものに通った後のことを言っているんだ」
「?」
話がどんどんと難しくなってきた。
「例えば、君は確か高卒認定試験を合格したんだよな?」
「そうです」
「さっき聞いた話と重複するが、高卒認定試験を取った後は何をしたい?」
「大学を受験して、合格して入学したいです」
俺はさっき言ったことを、ほとんどそのまま返す。最後の結末は分かるけれども。
彼の顔はどんどんと暗いものになっていく。見ているこっちも暗くなっていくよ。
「君は、大学を卒業した後のことを考えずにのほほーんと大学生活を送ることになってしまう。まぁ、これが悪いとは言わないが、それは真の教育なのかというと、疑問を呈さねばいけなくなる」
「はぁ」
「君見たいな、のほほーんと大学生活を送ること自体は悪くないしそれでしっかりと大学の学習を受けるのであれば、問題はない」
「はい」
「だけれども、さっき話した学習塾、というか塾というもののせいで大学という教育機関というものは、間違った機関になってしまっているんだ」
「間違った機関?」
「君には無い考えだとは思うが、なぜ普通の人は大学に入学したいと思う?」
「えっ……? 大学で学びたいことがあるからじゃないんですか?」
なんだ、その質問は?
「そう考えると思っていたよ。ただ、その答えは間違えだ。もちろん、全員が全員今から私が言うことを考えているかというとそうではないけれども、大半の人は大学で学びたいことがあるという外面だけを囲い、内面には腐った考えを宿しているんだ」
「腐った考え?」
俺が聞くと、彼はさっきとはまた違う感じのため息をつき、そして地面を叩きこう言った。
「奴らは、大学のことを就職塾と勘違いをしてやがるんだよ」
彼は、大きな声で怒りをあらわにした。俺は、彼の冷静的な感じからいきなりの感情的なものに変わったことに驚いた。




