百七十八巻目 腐った分野
「聞いているのか?」
「あっ、えぇっと……高卒認定試験について学びたいと思って……」
「高卒認定試験か……くだらんねぇ」
「えっ?」
話が速くついていけないし、くだらないと言われた。
「高卒認定試験のことを学び終わったら何をしたいんだ?」
「高卒認定試験を受けて、認定を受けて、大学を受験して合格したいです」
「合格した後は?」
「……」
言葉で責められるのは、生まれてきてから何度かしかない。その数少ない体験が、今起きている。
「……私は常々思っていることがあるんだ」
「?」
時間を無駄にしてはいけないと言っているくせに、なにか話を始めた。
「この国。この日本というのは世界の中でもかなり恵まれている国だ」
「はい」
「黄色人種のくせに、資源がないくせに、無駄に技術があり、無駄に人がいる。そして、この国は世界の中でも有数の先進国として無駄に存在している」
「はい」
「無駄に技術があるおかげで、交通、医療などは多少の無理はあるものの世界の中でもトップクラスだ」
何が言いたいんだろう。
「だけれどもね、信長君。そんな無駄な技術を持っている日本にも、腐った分野というものが存在するんだよ」
「腐った分野?」
「その通り、腐った分野だよ。この国には本当に腐ったものがあるんだよ。腐りすぎて、目を避けたくなるぐらいだ」
「はぁ」
「その腐った分野というものこそが、今君が受けているものだ」
「受けている物?」
「分からんかね?」
いったい、どういうことだ?
「今、君は何を受けている?」
「話を……」
「じゃあ、なぜ私が君に話をしていると思う?」
「話したいからじゃ……」
「……君、大丈夫かね?」
えぇ……。
彼は、頭を掻いて「ふぅ……」とため息をつき、俺をまた見下した目で見てくる。そして、「教えてあげよう。理解力のない君に。時間ももう、無駄になってしまいましたからね」と言って、話をまた始めた。
「君見たいな理解力のないやつが、この分野をおかしくしているんですよ。もちろん理解力というものは調教は本来で切るはずなんですが、その調教がその分野の中では許されなくなっているんだ」
「はぁ」
「その分野というのは、教育だ」
「教育?」
「教えて育たせる。育って生き、教えていく分野。それが、教育のはずだ」
「はぁ」
「この日本には、教育機関というものが多数存在する。その機関というのも外面を見るだけであれば世界の中でもトップレベルのものだ」
「そうなんですか」
「だけれども、内面をじっくり見ていくと本当に腐っている部分が見えてくるんだ」




