百七十七巻目 高圧的
ジョンは玄関へといって、カギを開けた。そして「いや、こりゃどうもミスター安藤」とミスター安藤に声をかけていた。
玄関から、ここまでは近いといえど距離はあったのでそこまで詳しく事は聞くことはできなかったけれども、ミスター安藤はジョンが言ってくる何かを必死に否定しているようだった。すこしだけ聞こえてくるミスター安藤の声は、ミスターの名にふさわしくない少し高い声だった。ただ、ミスターというからには男なのだろう。そこらへんは、俺を教えてくれる人なのだから敬意を払っておかなければいけないな。
偽美希は、鼻を掻いている。鼻を掻きながらをテレビを見ている。なんという、暇そうな画だろうか。
少し経つと、ジョンはそのミスター安藤を連れてリビングへ戻ってきた。俺は、無意識のうちに座っている体制から、ミスター安藤を迎え入れるため立っていた。
「さて、ノブ。この人がミスター安藤です」
ジョンが手を向けた先にいたのは、背がだいたい俺ぐらいある、銀髪で何というか歌舞伎町にいそうな恰好をしている男とは呼べないほどの、強いて言うのであれば少年といった方がいい人だった。
「ふん……君が信長君か」 鼻息をもらし、そして俺を見下すように言う。
「は、はい」
容姿は少年であるが、性格はどうやらひねくれているというか大人びているようで、人を見下すことに関してはうまいものがある。もちろん、褒めているわけでは無い。
ただ、これから様々なことを教えてくださる師を咎めることはできないし、咎めたところでなにか利益を得ることも出来ない。ここはひとまず、心を落ち着け冷静になることにする。
「さてと」 ジョンは、鼻を掻きながらテレビを見ている偽美希の手をとり、「ノブが勉強を出来る環境を整えたわけですから、邪魔者は早速消えることにしましょう」と、言って準備したものを持って、家を出ていってしまった。偽美希が、ミスター安藤のことを少し威嚇するように、睨んでいたようだけれども気にしないことにする。
「……」
家にミスター安藤と俺の二人きりになってしまったので、無言になってしまった。
さすがに、初対面でまだ自己紹介もしていいないのに、べらべらもしゃべり始めても仕方がないからな。
……などと考えていた俺が少し、馬鹿らしく感じてくる。
「――君、時間というのは有限なんだ」 とつぜん、ミスター安藤は言葉を発した。
「は?」 俺は驚いた。
「君が今無言でいることは、その分だけ君と僕は利益を生むチャンスを無駄にしているということなんだよ」
「は、はい」
「まず、君が何を学びたいか聞こう」
やばい。この人、かなり高圧的で、かなり時間にうるさい。
俺は彼の言葉にどんどんと誘導されていく。
このままやってけるんだろうかなぁ……。




