百七十五巻目 ミスター安藤
飯を食べて、少しテレビを見ていると偽美希が「それでは明日は早い故、寝かさせていただきます」と言って、偽美希は寝室へと向かっていった。
この家はそもそもジョンの家だけれども、一人暮らしにはかなり大きい部屋だ。だから、俺と偽美希が居てちょうどいい具合になっている。寝室は三つあり、リビングも無駄に広く、風呂もしっかりとした最新式のものを使っている。寝室は俺と偽美希の部屋にはベットが置かれているが、ジョンの部屋には敷布団が敷かれている。もちろん、使わないときは畳まれているけれども、それにしたって床は畳みでしかれていて、ほかの部屋にはないジョン独特の部屋が構築されている。
最初のころは、少しジョンの部屋の方がいいなとか、うらやましいとか思ったりしたけれども、そこは居候している身だということを意識して諦めることにした。最近はむしろベットの部屋の方が眠りやすくなっていて、とても気持ちがいい。偽美希も一昨日初めてこの家に来た時は、「なんだ、この布団は!」と絶叫していたけれども、今日は普通に寝室に戻っていっている。やっぱり、便利な方が人っていうのは慣れやすいんだ。
「ノブ」
ジョンが俺の名前を呼ぶ。
「せっかくですので、明日からあなたの講師になってもらうミスター安藤について説明をしたいと思います」
「分かった。分かったけれども、俺も一つだけ先に質問していいか?」
俺には少し、疑問があった。もう大学に行くことも高卒認定を受けることも決めたけれども、一つだけ気がかりなことがあった。
「その、ミスター安藤っていうのは俺のところに来てもいいのか?」
「と、言いますと?」
「だってさ、ミスター安藤はその、仕事とかしていないのかって話さ」
おれが、気になっていたことを話すとジョンは「くく」と少し笑い、「なるほど」と声を漏らした。
「ミスター安藤はですね、働いていなくても働いているようなものなんですよ」
「えっ?」
あまりにも突然、ジョンが変なことを言い出すもんだから驚いてしまったよ。
「ミスター安藤はですね、優秀な頭脳の持ち主でして歳が15にして会社を立ち上げ、業界一位企業にまで上り詰め、さらにはその企業で挙げた利益を運用して株式でも成功をおさめ、個人資産というのも計り知れないほどの額になっているんです。現在は個人資産を投資会社に預けて資産を寝ている間に増やしているんですよ」
「ほぉ……」
「だから、あなたに勉強を教えていても大丈夫なんですよ」
「なるほどなぁ」
なるほど。ミスター安藤は金持ちってわけか。
「まぁ、ノブ。どうせ明日にはそのミスター安藤に直接会うわけですから、楽しみにまっていてくださいね。多分……ふっ!」
ジョンが最後に笑いをこらえきれずに吹いていたけれども、とりあえず無視をしておこう。
もしかしたら、ツグクル文庫大賞にこれを応募するかもしれません。
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