十七巻目 天使だよ・・・
「ご、ごめん」
再度謝罪した。こんなにも興奮した後、即座に謝罪したことがあっただろうか。いやない、絶対にないよ。俺はいろんなことをしてきた。関所を撤廃したり、撰銭令を出したり、キリシタンにやさしくしたり・・・そりゃあ、あまり褒められたことをやってないし、むしろ「マジ信長死ねよ」と思っていた奴いるかもしれない。だけれども俺は、やりたいようにやってきた。だって俺が考えてること、実行することは必ず成功するからだ! まぁ、若干の例外はあるけれどもそこらへんを気にしていたら前に進めないからな!
その中には悪いこともあったよ。もちろん謝罪なんてしないさ。
だけども、今回は謝罪をしてしまうよ。謝罪しなきゃいけないんだよ。もし、こんな所で嫌われて、もう二度と会えなくなってしまうならそれこそ本能寺で死んだほうがよかったと思うだろう。もちろんそんな風に考えたくはないし、絶対にそんな思いはしたくはない。俺は絶対に彼女を手放したくないんだ。絶対に・・・。
「・・・ノブって意外と、あれなんですね」
にやにやとしながら、ジョンは言ってくる。くそ、こんなに心を覗かれるの嫌なんのか・・・本当に刀がなくてよかったな、ジョンよ。
「あの、もう、その、入ってもいいですか」
「いいですよ。あなたは、あなたの役割を果たしただけです。別にあなたが悪いことを・・・したということはないでしょう」
「あ、ありがとうございます! 失礼しましゅ!」
ジョンと彼女は軽い会話を交わした・・・
『信長さん・・・』
『君・・・』
淡い展開を少しは期待したりする。ちょっとだけだから。ちょっとだけね。
扉を開く音がすると同時に、なんだかいい香りがしてきた。もちろん本当にいい香りがするわけではなく、そんな感じがするだけだ。そして・・・
「あ、あらためて初めまして」
か、かわいい。何がかわいいかっていうと、もう全部がかわいいんだけれども、今俺が一番かわいいと思うのはこの愛らしいこの声だ。癒される、いろいろと癒される。身体的にも、精神的にも、性欲的にも・・・。
すばらしい、すんばらしいね。現代っていうのはこんなに素晴らしいのか。ビバ、未来の世界! 戦国の世なんてくそくらえ!!
それに・・・。
「あの、この洋服にあってますか?」
「私は似合っていると思いますが、ノブはどう思いますか?」
ジョンは僕に質問をしてくるが、そんな質問をする前に彼女に言ってあげればよかった。だって、誰が見たって、今のその恰好は・・・。
「天使だよ・・・」
うっとりと、うっとりとしてしまう。かわいいよ・・・。
「あっ・・・ありがとうございます!」
彼女は顔を赤らめ、ちょっとだけにやにやとする。ジョンのにやにやより、数千倍素晴らしい。そのにやにやならば永遠と眺めていられるよ! ジョンの代わりにこの子が住んでくれないかな・・・。




