百六十八巻目 高卒認定試験の話
それになんで、鈴木さんは俺の名前(本名じゃないけれど)を呼んだんだ?
「ノブ。この時代の日本の教育システムと言うのは、私にもわかりやすいものです」
「そうか」
「そうなんだぞ、生贄ボーイ」
俺を二人して洗脳をしているみたいで、怖い。
「私が取得しておいたノブの戸籍というのは、中学までは卒業してある少し安い戸籍なんですよ。もちろん、戸籍を取得する事態はちょっとしたあれなんですけれども、私は未来人だから心配いりません」
何が心配いらないのかは分からないけれども、仮にでもこの国の頂点を極めかけた人間なのに、なんで与えられたのは安い戸籍なんだ? もう少し高いやつが良かったよ。
「そして、中学までを卒業しているとある試験に参加できるようになるんですよね。ね? ミスター鈴木」
「おうよ」
何に参加できるというんだ? 試験? 俺は試験なんてやったことがないぞ?
「ノブ」
「なんだよ?」
「あなたにやってもらいたいのは、高卒認定試験です」
「は?」
―――
「信長様……もう、腹いっぱいですよ…………」
さすがの偽美希もお腹がいっぱいになり、食後のケーキを食べているとき俺はかなりの頭の痛みに襲われていた。けっして病気になったわけでも、他人に呪われてそうなっている訳でもない。一番近いものと言えば、知恵熱が当てはまる。
「ジョン。それと鈴木さん。一体、高卒認定試験って何なんですか?」
「高卒認定試験っていうのは、ノブに一番関係していることで簡単に言うんであれば、合格すると大学を受験することができるようになる試験のことですね」
「あと、付け加えていうんであれば、高卒認定試験っていうのは、読んで字のごとく高校卒業レベルを認定するための試験なんだ。だから、これを合格すると生贄ボーイの学力っていうのが高校卒業レベルはあるっていうことになるんだ」
「高校卒業レベルって、すごいことなんですか?」 俺は素直に聞く。
「確かに、今の時代ではすごいとは一言では言えないけれども、やっぱり学力を認められるっていうのはすごいことだよ」
「なるほど……」
高卒認定試験。学力が認められるっていうのは中々いいのかもしれない。うん。
でも、なぜだろう。何か引っかかるんだよなぁ……あっ!
「ちょっと待ってくださいよ、二人とも! 高卒認定試験が受からなければ大学を受験でいないっていうのは分かったけれども、なんで俺が大学に行かなきゃいけないんだよ?」
そう、学力が認められるというのは分かった。俺も、認めるとかそういう感じなのは好きなんだけれども、やっぱりなんで大学に行くのかは分からないままだ。
「やっぱり、そこが気になりますかノブ?」
「さすが、生贄ボーイだよ」
だから、こいつらは何の話をしているんだ。




