百六十二巻目 どうも忘れやすい人だ
眠いですね
「じゃあ、行きますね」
「もう二度と来ないでくださいよ、先生」
「正月ぐらいはあいさつに来ますよ。では、沙耶さんお元気で」
「あら、もう帰っちゃうの鈴木さん。というか、いつにもまして食べるの早いわね」
「いや、まぁ、食べたというか……」
「食べた?」
「いや、気にしないでください。また、来ますから」
「来ないでくださいよ!」
女主人の名前は沙耶さんというらしい。凜監督とはどうゆう関係なんだろう? 親子なのかな?
「生贄ボーイ! 行きますよ!」
まぁ、とりあえず鈴木さんについていかないと。
※※※※
「ほぉ~。男みたいな変わった名前だな」
「良く言われます」
顎をポリポリと掻きながら、私をじろじろと見ている。なんだか恥ずかしい。
「だけれども、信長よ。この女が上物だとしてもよぉ、一体どうするっていうんだ?」
「どうするってどういうことだよ?」
なんか信長様と猿が私の事をおいて話を始めてしまった。構ってもらえないどうこうではなくて、勝手に会話を始めれるのは少しつまらないものがある。
「おめぇ、忘れたとは言わせねえぞ? 徳川様がよ、南蛮禁止令を出してるだろ?」
「確かにそうだが、猿。お前の目には、こいつが南蛮人に見えるのか?」
「見えねぇけれども、お前が昔から好む奴は大体南蛮人だろ? それだからお前が好きな奴は全員南蛮人だってことで、徳川様がお前の知り合いを全員調べたじゃねぇか」
「徳川さま言うなって。あいつに様付けするんだったら、お前に様付けしたほうが百倍いいわ」
「何をそこまで徳川さまを嫌うことがあるんだかねぇ。兎にも角にも、お前の知り合いが調べられたってことは覚えてるな?」
「まぁ、覚えてるさ。あまりにも屈辱的だったからな」
信長様は、なんかものすごい笑いをしながら猿のほうを見る。
「なら、言わせてもらうが。こんな正体がよく分からない人間をお前は、南蛮人じゃないと確証をもって言えるか?」
「当たり前だろ。もしこいつが南蛮人だっていうんだったら、俺だって南蛮人さ!」
「なんでそうなるんだよ」
「だって、こいつは流調に日本語しゃべってるぜ? それで何を疑うっていうんだ?」
やっぱり、信長様はどこにいても信長様なんだな。
「まぁ、いいよ。今は徳川様も、その下っ端どもも東京の方に行ってるらしいからな」
「そりゃ安心だ。よかったな……えぇっと、名前なんて言ったけ?」
信長様は、どうも忘れやすい人だ。
「いや、やっぱり言わなくていいや。人に言われるより、自分で名前を付けちまう方が覚えやすい」
「何たる横暴ですか」
「横暴も糞もねぇよ。俺が名前付ける。それで、お前はその名前で呼ばれる。ただ、それだけのことじゃねぇか」
こういう、勝手な解釈なところも信長さんらしいな。
「とりあえず。今日からお前は犬だ。よろしくな」
なぜ。




