百五十九巻目 鈴木さんは槍をさした
Twitterはじめました(あめみや風)
「はい」
とりあえず、冷静に返事をしておいた。内心何を言われるかでドキドキだけれども、それを悟られてしまってはいけないからな。
「生贄ボーイは冷静だな。いつも俺が話をするときはみんな慌てふためくのに」
どうやら、悟ったのが裏目に出たらしい。だけれども我を通さないと、少し変な空気になってしまう。ここはにやけないで、冷静な面持ちでいよう。
「ま、いいか。とりあえず話をするぞ」
「はい」
鈴木さんは水を飲み「ふぅ」と言った。ちょうどその時偽美希の手がぷるっと震えた。蘇るサインなのか?
「そもそも、なんでお前はロリポップの下で働いているんだ?」
「えっ?」
「えっ?」
偽美希に気をとられていていたけれども、鈴木さんの言葉はしっかりと耳には届いていた。ちゃんとした環境下であれば大丈夫だ。
だけれども、質問が少し斜め上で鈴木さんらしくない口調だったので思わず声を出してしまった。
「いや、だからさ、なんでお前はロリポップの下で働いてんの?」
さっきの言い方よりかは鈴木さんらしい言い方だ。
これに答えるものを俺は今回は持っている。
「それはですね、スマートフォンを買うために……?」
「?」
……あれ? 俺って、スマートフォンを買うために働いていたはずだけれども、もう俺スマートフォン持ってる。あれ? それじゃあ、俺は一体何のために働いているんだ?
確かに働くのは楽しいんだけれども、働く意味を効かれると答えられなくなってしまう。
俺が今働いている意味って、一体何なんだ?
「どうした?」 鈴木さんは俺が黙ってしまったので、聞いてきた。
「……いや、ですね。よくよく考えてみたら俺、何のために働いているのかわからないんですよ。欲しいものは手に入れたし、仕事は楽しいですよ。お客さんと触れ合ったりすることもとても楽しいです。だけれども、働く理由となると、良く分からないんです。なんで俺は働いているのか。もちろん生活のためではあるんですよ。だけれども、それ以外の理由はないんです」
俺は包み隠さず話した。俺は、なぜ働いているんだ? それを考えつつ話した。
すると鈴木さんは笑顔になった。おかしな話だ。
「生贄ボーイ。その言葉を待っていたよ。仕事をする意味が分からない。それだよ。君に足りないのは働く意味なんだよ」
入った後に「へっへっへっ」と笑っていた、かなり怖い。
鈴木さんは続けて言う。
「俺はな、生贄ボーイ。お前が好きだ。もちろんこれはラブの意味じゃないぞ? ライク的な意味だ。お前は俺が今まで会ってきた人間の中で一番優秀で、素晴らしい人間だ。リーダー性も秘めていて、正直なところいつ俺の役職を奪い取ってしまうのかひやひやしてしまうところもある。簡単に言うと、俺はお前のことをかなり評価している」
鈴木さんは、そういってニコニコしながらまた水を飲んだ。
鈴木さんにそう言ってもらえるのはうれしい。リーダー性があるのはあれとしても、鈴木さんにそこまで思わせることができた俺を褒めてやりたい。
「だけれどもな」
少し有頂天になりかけていた俺に、鈴木さんは槍をさした。




