百五十五巻目 日本有数の電気街
日本でも有数の電気街として名をはせる秋葉原も、今日ではオタク文化の開化によって、街の色も人の色も変わっていった。むしろ俺は、ここらへんが何もなかった時のほうが印象が強いから、電気街になったということもびっくりしている点だ。
電気街ということもあって、不思議な装飾をしている建物やただ高い建物がたくさん並んでいて、今でも面白いし楽しい景色だ。
無論、初めてここに訪れたれたもの、もっと言えば大きな建物などない田舎、もしくは過去からやってきた人はみな驚愕し無言になってしまうことが当然。
だけれども、彼女だけは違った。厳密に言えば彼女ではないのかもしれないが容姿的に考えよう。彼女は、当然のことにはならなかったのだ。
「おぉ! 何ですか、この場所は」
昨日は車に乗っていることに興奮していて外の世界をあまり見ていなかったようで、今日になって直視できるようになった街の景色に彼女は今、今まで以上に興奮しているのだ。
「ここは秋葉原という場所だ」
「アキハバラ……なんという響き」
興奮しているものは興奮しているものともうあきらめをつけて、俺は偽美希の手を引っ張ってロリポップの店の前に行くことにした。
途中、警察官にじろじろと見られたが職質されることはなかった。俺のような人間が、なんで職質を恐れなければいけないんだろうか。
そして、いつもならばすぐ着くはずの道のりを三倍近い時間をかけて歩き、ついに鈴木さんに会うことができた。
「おう、おはようさん生贄ボーイ。……ずいぶんと疲れてるじゃないか。大丈夫か?」
「えぇ、何とか大丈夫です。多分」
多分、大丈夫なはずだ。俺の精神力。がんばれ、俺の精神力。
「信長様! 腹が減ってもう倒れそうです! お願いいたします!」
「おぉ、美希は腹が減ってるのか……ってなんで美希がここにいるんだ?」
「えぇ、そのぉ……とりあえず朝ごはんに行ってもいいですか?」
「そうだね、飯食べながら話をすることにしようかね。場所は俺が決めてもいいかな?おいしい場所があるからそこに行こう」
鈴木さんの心の広さには(というか無神経なのかも)感服するものがある。
鈴木さんの知っているおいしい場所というのも気になるから、早く行こう。




