十五巻目 ・・・なんとなくよ
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「・・・というか、どうしてそんな恰好をしているんですか?」
冷静なトーンで、女に語りかける。
「なにか変かしら?」
「変っていうか、どこで着替えたというか、いつ着替えたというか・・・」
「そんなことは気にしなくていいのよ!」
「でも、なんで白装束なんですか?」
「・・・もう、人生をやめるからよ」
そういうと、女はまた泣きだしてしまった。今度はさっきよりも大きく、さっきよりも激しく涙を流し始めた。
「なんで人生をやめる必要があるんですか!」 強い口調でたずねる。
「ひっ!?」 女は驚いてしまった。その驚きによって、涙は乾いてしまった。
「す、すみません。少しカッとなってしまいました」
「いや、たぶんそれが普通の反応よ」
女がそう答えた後、ジョンは一度深呼吸して女に尋ねた。
「正直に話してください、なぜ死ぬ必要があるんですか?」
そして、女はこう答えたのだった。
「・・・なんとなくよ」 と。
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まだ帰ってこないな・・・。えーっと、この角ばった形に縦棒が入った形同士を組み合わせると、これの頭ができるんだな。そして、ちょっとだけ飛び出ているところをやすりで削ってあげれば・・・。
「出来た!」
ようやく頭が出来上がった。時間は・・・一時間もたっているのか、もう。
「早く帰ってこないかな・・・」
そういえば、ここに塗装をするって書いてあるけれども、どうやって塗装すればいいのかな。まぁ、絵に関しては俺はまったくもって知識がないわけだから、とりあえずジョンが帰ってきたら聞けばいいか。
じゃあ、なおさら早く帰ってきてほしいな・・・。
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「なんとなくで死ぬ必要がありますか!」
「ご、ごめんなさい」
信長のいない外では、ジョンが女に説教をしていた。
「第一にですね、あなたがやったことはもう、この世界では過去のことなのです」
「はぁ」
女は地べたに正座をして、ジョンをみている。
「過去をいくら見返したところで、未来は変わりません」
「・・・はい」
「第二に、ノブはそんなに気にしていないと思いますよ」
「えっ?」
「ノブは気にしていないと言ったんですよ」
「気にして・・・いない?」
ジョンは頭をぽりぽりと掻き、「はぁ・・・」とため息をもらした。
「ノブぐらいの度量があるならば、あなたに恨みなどはないでしょう」
「ほ、本当ですか?」
「多分・・・」
「・・・うぅ」
また、女は涙を流してしまった。
(まぁ、もしかしたら殺したいほど憎んでいるかもしれませんけどもね・・・・)
「とりあえず、ノブのところに戻りましょう!」
「ひゃい!」 鼻水交じりに、女はそう答えた。
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