百四十六巻目 結構楽しいもんだ
「またあなたですか。あの部屋から出ないようにと、お願いしたじゃないですか!」
「知るか! いくら信長様が南蛮人を評価しようとも、俺はお前らを認めねぇ! もちろん、信長様は素晴らしいけれどもな」
俺が見た限り、あの人はジョンというか南蛮人を嫌っているようで、なぜか俺のことを崇拝しているようだった。
崇拝されたり、尊敬されたりするのはとても気分がいいけれども、なんだか知らないやつに言われると少し怖いもんだな。まぁ、本当のところ、本当に知らないのかはまだ分からないんだけれどもね。
「とりあえず、俺はあの猿様に権六様が消えてしまったことを急いで知らせに行かねばいけぬのだ! さっさと、この場所から解放しろ!」
「と、言われましても、私としてもあなたをこのまま返すわけにはいかないんですよ。なぜ、あなたがここに来たのかを調べなければいけないですしね」
猿様……というのは、猿のことだろう。奴は何か腹に一物がありそうだけれども、とりあえずは優秀な人材だからな。それに比べて権六は、少し変わったやつというか、風変わりな奴で、もちろん力が強く頼りになるんだけれども……権六が消えたというのは一体どういうことなんだろうか?
というか、権六と猿の仲は俺がいなくなった後さらに悪くなったはずだし、立場的に上になった猿であっても、権六派(この人が権六派かどうかは知らんが)であれば、こういったところで、こういった状況下であれば素になってしまい、嫌っている派閥の長である猿のことを猿と呼び捨てにしてしまうはずだ。それがないというのは、一体どういうことなんだろうな。
「調べるも何も、俺は早く行かなければいけないんだ。信長様が亡くなってから、色々と忙し……?」
「……どうしましたか?」
その人は怒りを露わにしながら怒っていたのに、突然白い顔をして黙りこんでしまった。それに合わせてジョンも、どうして静かになったのかを聞くことにした。
その人は、震えた声で言ってきた。
「信長様は死んでいるはずなのに、なんでここにいるんだ? もしかして俺……」
あぁ、どうやら俺が初めてここに来た時と同じ勘違いをしているらしいな。
こういう光景をのを見るのは、結構楽しいもんだ。




