百四十四巻目 なんというかね
神様は、なぜか悔しそうに唇を噛みしめていた。そんなに強く唇をかみしめたら血が出ちゃいますよと言いたいところだったが、言える雰囲気では無かったのでやめておいた。
「さて、ノブ」
ジョンが、神様の話が唇をかみしめているのを見ながら俺に話しかけてきた。
「あなたが知りたいこの施設のことというのはこれぐらいでいいですか?」
「いや、知りすぎたぐらいだよ」
「それは良かった」
神様を見るのをやめて、俺を見てニッコリと笑った。爽やかなウザさだ。
「さて、あなたがもう一つ知りたいことについて説明を始めることにしましょう」
ようやく、俺が一番知りたい情報を話し始めてくれるようだ。
※※※※
「おい、そこの女ぁ」
あぁ、絶対私の事を言ってるよ。何なんだよ。信長とか言ってたし……厄介ごとになりそうだな。
私がそんな風に思っていると、向こうから近づいてくる良く分からん二人組は、私に気づかれないように小さな声で話をしている。まぁ、聞こえているんだけれどもね。
「信長、あの女どこかで見たことねぇか?」
「見るわけねぇだろ。こんな、めんこい女は俺初めて見たぜ」
「だからおめぇは、時代に置いてかれるんだよ。今時あれくらいの女は街にいきゃあどこでもいるぜ」
「おめぇも人を見る目がねぇなあ。人の良し悪しも分からんのは人として最低だぞ?」
「信長殿に最低と言われては、この猿もどうしたらいいのか分からんですねぇ」
「まったく、猿っていうのは面倒な奴だ」
「お前も存外だよ」
猿とか、信長とか。私なんか子の二人の関係性が分かったような気がする。というか、知っているという方が正しいと思う。だけれども、私が知っている関係とは違った、まるで友達のような関係だ。
もうはっきりと、二人の顔が見え、名前の推測ができるようになった。
「女、おめぇ何もんなんだぁ?」
とりあえずは初対面の相手にその言い方はないと思う。
まったく、何の証拠もないけれどもあの人らしいというか、なんというかね。




