百四十三巻目 ようやく二人の話が終わった
「えぇ、時空の訂正ですよ」
「そんな馬鹿げたことあるわけがない」
「馬鹿げたことじゃないですよ! 第一、私はそれを中心に学生時代から研究してきたんですから」
時空の訂正、というのが今の二人の論点らしい。時間やら、時空やら良く分からんことをよくここまで短時間でしゃべれるものだ。知識のない俺にとっては本当に退屈なものだよ。
「……じゃあ、時空の訂正というのはどういったことをするのかをお教え願いたい」
神様は俺としゃべるよりも小さい声で、ジョンにそう言った。
しかし、ジョンは鼻笑いをしてこう返した。
「そんなものは、私よりもあなたが一番知っているはずですよね」
「馬鹿な。現代人である人間が、そんなことを真剣に考えるはずがないだろう!」
「おや、そうでしたか。私の勘違いか、記憶違いですかねぇ。すでにこの時代のあなたは、時間と時空間の矛盾に気づき、不毛とも言える研究を進めていると思っていたのですが…‥」
「――!」
なんかわからんが、神様がすごい驚いている。てか、この二人美希のことを忘れているんじゃないよな? 俺はこの施設がどんなのかを知りたいという欲はあるけれども、別にここまで詳しく知りたくもないんだ。ジョンがさっき言っていた“表の理由”それだけでも、俺はおなか一杯、いや知りすぎてしまったぐらいなんだ。それなのに、この二人は俺のことをお構いなしに、色々と喋り続けてしまう。こうなってくると、美紀の事が一層心配になってしまうな。
「まぁ、いいでしょう。まだ真理に近づくにはあなたには時間が早すぎます。もう少しだけ、我慢をしていてください。そうすれば、私が今ここで何をやっていて、どれだけそれがこの時代にとっても、ほかの時空軸にとっても有益であるかがわかるでしょう」
「……くそ」
なんだかわからないが、ようやく二人の話が終わったようだ。




