百三十四巻目 とりあえず、人里を探すことにしよう
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俺たちの目の前には、なぜだか壁が建てられていて察するになにかを隠していると思われる。
だけれども、ジョンはそれを見せたくないようで俺たちを「ここだと、色々な話ができませんから中庭に行きましょうか」と言ってここから離れることになった。
中庭に行く途中、神様が俺にこんなことを言ってきた。
「なぜだかわかりませんが、私にはここが未来を作っている施設には思えませんよ」
神様はこの施設が何なのかを知っているのだろうか? というか、未来を作っている施設ってどういうことだ?
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天正10年6月3日 京都
「ここはどこなの?」
辺りをみると木や草が茂っていて、さっきまで居た実験室とはまったく違っている。
それどころか、都会だとまず見ることのできない広大な森に私は驚きを隠せないでいる。
どこを見てもアスファルトの姿が見えないし、さらに言うと排気ガスの匂いさえもしない。
ものすごい田舎に来たとしても、どっかしらには登山客や、何かが落とした無機物(特にプラスティック)のごみが落ちているはずなのに、それすら落ちていない。登山禁止のマークもないし、それになんだか懐かしい香り、雰囲気がする。
「ていうか、この姿って……」
きれいな洋服を着ていたはずなのに、今は血がついて汚れている和装の衣服を着ている。
そして、下着もあの時代でつけていたものでは無く、女子だったらまず着ることのない、ふんどしをつけていている。この感覚もとても懐かしい。
何度か懐かしいと思うたびに、着実にあることを私は考え始めた。
それは、ジョンがさっき言っていた言葉が結びついて考えたことだ。
「さすがに時間移動をしますから、他を巻き込むわけにはいかないんですよ」
この言葉、時間移動という言葉。
確信を持つことは難しいけれども、多分私は時間移動をしてしまったんだろう。
未来か過去かはまだ分からないけれども、多分どっかに飛ばされちゃったんだろ。
「まったく……私の人生もついてないわね」
とりあえず、人里を探すことにしよう。




