百二十五巻目 凛に殺されますからねぇ
「おだ……のぶながにですか?」
「はい、そうです。織田信長にです」
誘導したわけじゃないから、なんだか恥ずかしいな。俺がすごいことは知っていたけれども、こんな風に直接言われたら、なんか俺が言わせたみたいで恥ずかしくて……死にそうだ。
とりあえず俺は、この場を収めるためにも恥ずかしさを抑えて
「その夢がかなうといいですね」
と言っておくことにした。
「心配いりませんよ、生贄殿。これは夢じゃありません」
「?」
「私は夢を見ない主義なんですよ。私は作れるものを正確に作るだけです」
自信気に語る神様を見て、俺は何だかその姿がかっこよく思えてきた。
色々なことを見てきたけれども、こんなにも夢に、いや現実を一直線に見つめている人はそうそういないだろう。
自分でいうのもなんだけれども、俺は人を見る目がある。それだけは優れているつもりだ。みっつーとかも最後のほうは良く分かんなかったけれども、絶対に優秀なはずだ。
だから言えるけれども、神様は将来ものすごい人になる。将来というか、近々ものすごく有名な人になるだろ。それだけは分かる。
「それじゃあ、生贄殿」
「はい?」
「さすがにもう歩くのは私が嫌ですから、大学に停めてある私の車でリーダーのいる場所まで行きましょう」
「車?」
車……そういえば、まだ乗ったことがなかった気がする。
「運転だけは自信があるんです。みんな涙を流しながらいい運転だったと入ってくれるほどなんですよ!」
いい運転か……。涙を流しながら言われるほどなんだからよっぽどのものなんだろうな。
「さっ、早く行きましょう!」
「はい!」
そして、神様と俺は、神様のスポーツカーに乗り美希がいると思われる場所に向かった。
※※※※
「あれ? なぜ機械が作動しないんでしょうか?」
一体、ここはどこなんだろう。ものすごく頭がいたい。知らない声も聞こえてくる。
目を開けると自分が今狭い場所にいることが分かる。腰元に手をやっても刀がなく自分が今何をされているのかわからない。だからこそ、頭が混乱していく。
「このスイッチを押せば確実に時間移動できるはずなんですけれどもね……」
どうやら壁の向こうに人、男がいるようで、その男は一人でわけの分からない言葉を繰り返ししゃべり続けている。可哀想な奴だ。
「とりあえず、美希の状態だけ調べておきますか。万が一何かあったら凛に殺されますからねぇ」
そう、男が言うと周りの壁がキシキシと音を立てて、上がり始めた。
そして、すべての壁が上がり切った後、見たこともないような空間にいることを確認することが出来た。




