百二十二巻目 神様が言ってきた
しばらくの間白衣の彼女と話をしていたが、彼女のとてつもないほどの専門的な話に俺はついて行けずに、ただボーっとしながらうなずいていた。
「……というのが、私たちが考えている理想世界なんですよ!」
「なるほど!」
なるほどと言っているけれども、俺は何も理解していない。だけれどもこう返すだけで、彼女はうれしそうな表情を浮かべる。喜んでくれるんだったら、こうするしかない。
「もうすぐ、杉原教授が戻ってくると思いますからもう少しだけ待っていてください」と彼女は笑いながら話し「私は作業に戻ります、もうそろそろ試作品が完成しますので」と言って、帰っていった。
「ふぅ……」
彼女との会話に疲れた俺は、一度ため息をついた。
研究室にいる時点でかなりの精神的疲労感だったけれども、彼女と話し終わった後に静かにしていると、疲労感が弱まった気がするよ
「生贄殿、お待たせしました」
静かに地面を見ていたら、俺を呼ぶ声が聞こえ、そっちのほうを見てみると
「いやぁ、この装備をつけることになるとは思いませんでしたよ」
と、言ってくるものすごく白い防護服を着ている神様がいた。
「なんですか、その白い防護服は?」 神様は彼女と違ってとても話しやすい。
「これはですね、今から行く施設に必要なものなんですよ」
「そうなんですか?」
「そうなんです!」
神様はウキウキしながら、防護服の説明を始めた。
「この防護服は、赤外線が流れていても作業ができるように作った防護服なんですよ」
「そうなんですか」
「さらにですね、機械系の監視カメラにはこの防護服は映らないんですよ。面白いことに」
「それは、すごいですね」
単純に、俺はすごいと思い俺はそう声をかけた。
すると神様は、「いや、生贄殿。すごいのはこの防護服じゃないんですよ」と言ってきた。
「すごいのは、うちの研究員とうちの学生なんですよ。本当に彼らは優れたものを持っていて素晴らしいですよ」
誇らしげな顔で俺に言ってくるものだから、俺も納得した。
確かに、さっきの彼女も専門的な話ばっかしていたがとても優秀そうな顔だちだった。いろんな人の顔を見てきた俺が言うんだから、正しいはずだ。
「さっ、防護服の話はこれくらいにして早く行きましょう」
「そうですね」
「はやく、リーダーを救出しなければ」
そうだよ、早く美紀を救出しに行かなきゃ。だけれども、こんな研究所じゃこんなことを思うのは場違いな気がするよ。
「あっ、それとですね」
「はい?」
行こうと思う気合を入れていた時に、神様が言ってきた。
「もし、リーダーが何か被害にあっていた場合は……」
「場合は……?」




