百二十一巻目 謎だけれども
「生贄殿は、少し焦っている。少し椅子にでも座って休んでいてください」
神様はそう言うと、近くにあった黒い椅子を持ってきて「さぁ、どうぞ」といって、俺に座るように促してきた。
俺は、「ありがとうございます」と礼をして、素直に椅子に座ることにした。
「じゃあ、準備してきます」
そういうと神様は研究室の奥の方へと進んでいった。
――――
「ここのプラグは接続しといたほうがいいの?」
「いいよ、別に。というか、青の2を赤の3に接続して」
「わかった! だけれども、それを先にやっちゃうと後が面倒になるよ?」
「いいよ。その時はその時さ」
研究室は慌ただしい様子で、何かを作っているようだった。機械を作っていて工具の音がひっきりなしに聞こえるけれども、俺はその何かを作っている方向を見ることなく、ただ自分の足元を眺めていた。
「え~っと、生贄さんでしたっけ?」
「ん?」
神様が帰ってくるのをじっと待っていたら、急に知らない声が、俺の名を呼んだ。
……名ではないか。
「生贄さんですよね?」
「まぁ……そんな感じです」
「おぉ、あなたが生贄さんですか!」
声の主の顔を見てみると、ジョンのような笑顔を浮かべていた。見た目から察するに女性だと思われるので、その毒素の入った笑顔さえければいい人間だと思われる。
彼女はどうやら俺について何か知っているらしく、なぜか俺のことをみてものすごくウキウキしているようだった。
「あの、俺に何か用ですか?」
俺はそこまで人見知りする性格ではないけれども、慣れない場所だと少しばかり緊張してしまう。だから俺は本当によそよそしく、彼女に質問をした。
「いやぁ、杉原教授があなたの事をべた褒めしていてですね、どんな人かと思ったら、見るからにいい人そうで、今びっくりしてるんですよ」
彼女はとても丁寧に説明をしてくれた。そして、俺はその説明を受けて、神様が俺のことをどう思っているかを知った。いい印象を持たれていて良かった。ただ、どこにそう言った印象をもつ要素があったのかは謎だけれども。




