百二十巻目 すっかり忘れていたよ
「あぁ、どうも」
「あぁ、杉原教授。そちらさんは、ゼミの学生さんで?」
「そんなようなもんです」
建物の中に入って、神様がその建物の中にいた、これまた優しそうな人と話し始めた。
どうやら、ゼミの学生と呼ばれていたのは俺らしい。
「杉原教授。とりあえずは、あの研究というのは存続させるんですか?」
「突然、何を言い出すんですか。こんな通路で……」
「いや、誰も居ないじゃないですか、そこの彼以外は。どうせ彼も、あなたのゼミという名の研究を手伝いに来たんでしょ?」
「まったく……その通りですよ」
話は俺を置いてどんどんと進んでいく。あまり理解することは俺の頭が許さなかったが、唯一理解できたのは、神様の名前が杉原ということだけだった。これからは杉原さんと呼ぼうと一瞬だけ思ったけれども、なんだか神様にそう言うのもあれなのでやめることにした。
優しそうな人は、神様と少ししゃべった後俺のほうを見て、ニコッと笑った。
「君もいずれ、教科書に載る人間になるんです。それほどの研究をこの杉原教授はなさっているんですよ。研究に参加できることに誇りを持ちなさい」
この言葉を、優しそうな人は俺に告げて立ち去っていった。
――――
「パスコードセキュリティーっていうのは、防犯のため仕方ないと思いますが、本当に解くのが面倒くさいですね……」
地下へとエレベータで降りて、A-15研究室と書かれた扉の前で神様で何か操作を始めた。
カチッ
「おっ、ようやく解けましたか。いつもならかなり時間がかかりますから、今日はいいことがありそうですね……」
扉は自動ドアではなくて、神様は開錠した扉を手動で開いた。
扉を開いた先には
「あぁ、杉原教授。お帰りなさい」「杉原教授! 遅かったじゃないですか!」「教授! 試作品が出来ましたよ!」
などと、口々に神様の名前を呼びあっている白衣の集団が十名ばかしいた。
俺は、その白衣の集団に圧倒されて口をあんぐりと開けていた。
それを見てか同課は分からないけれども、神様俺の肩を叩いてこういってきた。
「生贄殿。ここが私の職場です」
なぜだか分からないけれども、その言葉にはどこか安心感があった。
「ここは、いわゆるタイムマシーンというものを開発しようとして研究、開発をしているA-15研究室です。ゼミの名はタイムテレポートとしていて、私の夢のためにこうして色々な学生たちが動いてくれているのです」
自信気に、神様は僕にこの研究室の説明をしてくれている。これは僕を落ち着かせように入ってくれているものだろうけれども、全く落ち着くことはできなかった。
むしろそんな説明をされたら、不安感を煽る一方だ!
「……詳しい話は、機密になってしまいますから言えませんが、とりあえずさっさと道具だけ取って、リーダーを助けに行きましょう」
あっ……そっか。美希を助けに行くために、ここに道具を取りに来たんだっけな。
すっかり忘れていたよ。




