百十五巻目 ケーキには目がないんだ
いや、どこに消えているのだろうか。
※※※※
頭を打った痛みもようやく治まり、私はこの研究所?の中庭のようなところに用意されたオシャレな椅子に掛けて、ジョンを待っていた。
「今、コーヒーとお菓子を持って来ましょう。研究所の中はどうも無機質だらけだ。こういう風な場所があることで身体的にもかなりの良効果があるのですよ、多分」と言って、私をここに連れてきたのだ。
ジョンの言う通り、確かに研究上の中とは違いコンピューターのような機械はなく、花壇やちょっとした池が設置してあってかなり過ごしやすいものだった。最近聞いた言葉でここのことを表現するのならば、都会のオアシスといったところだ。
ただ、一つ言えるのはこの中庭は怪しいコンクリートで作られた建物に囲まれている。
研究所の中から(もちろんここも中だけれども)は確認できなかった、この建物の、研究所が研究所らしいということを確認できた。というか、ここは絶対に研究所だ。
「何で私はここに連れてこられたんだろう」
私はそんなことを口にしてみた。ジョンは近くにいなかったし、誰も私のは話なんて聞いていないだろうから、恥ずかしさはなかった。ただ、ちょっと言った後に体が熱くなったけどもね。
―――
「お待たせしました、コーヒーとお菓子ですよ」
少したった後、ジョンがようやく戻ってきた。
エプロンなんかをつけてにやにやとしながら戻ってくる。こればっかりは気持ち悪いとしか言いようがなかった。
ジョンは私のところに約束のコーヒーを置いて、その隣にお菓子のケーキを置いた。
「ザッハトルテです。オーストリアのケーキですよ」
私はオーストリアという国のことは知らなかったが、見た目はチョコレートケーキそのもので、とてもおいしそうだった。
「これを手に入れるのはとても苦労したんですよ、コーヒーもケーキも」
私がコーヒーを飲もうとしたとき、ジョンは突然愚痴り始めた。
「私、苦手な人間がいてですね一人だけ。その人には本当はお願いしたくなかったんですけれども、出張先がちょうど私の欲しいものが売ってるところでしてね、嫌々お願いして、このコーヒーとケーキを手に入れたんですよ」
「へぇ」
「そこで終わればいい話なんですけれども、彼はその見返りとして時間移動に耐性がない人間が時間移動した際に生じる力をデータでよこせといってきたんですよ」
「ほぉー」
ものすごく、どうでもいい話だ。
「だからこそ、今日はあなたを使ってそのデータをとろうと思うんです」
「なるほどね」
「理解が早くて、助かります。さすが、ロリポップのリーダーを務めているだけのことはある」
なにか良く分からないけれども、なにかいけない方向に進んでしまったようだ。
「まっ、いっか。食べていい?」
「どうぞどうぞ!」
ケーキには目がないんだ。ケーキを食べてからでも遅くはないだろう。
そういえば、あらすじで言っていることを書いてないことに気が付きました。
今度、あらすじのところに書きたいと思います。




