百九巻目 じゃっ、みきみきの事探してきてね!
「俺が風俗行くわけがないじゃないですか!」
「あら、生贄君ぐらいの年だったら普通行ってるもんじゃないの?」
「知りませんよ・・・」
まったく、変な会話になってきたよ。どうすればいんだよ。
「まさか、美希に手を出そうとかそういうことを考えてるの?」
どう考えたらそんなことを思いつくんだろう。と、俺は考えたかったけれども、案外間違え出もなかったから、ちょっと顔を難しい変な顔をして凛監督のほうを向いた。
「なによ。その、図星なのかそうじゃないのかわからない微妙な顔は」
どうやら俺の作戦は成功したようだ。ジョンに心をよく読まれるようになってから、相手に心を読ませないようにする技術を身に着けてきたが、まさかこんなところで役に立つとはな・・・思ってもいなかったよ。
これもひとえにジョンのおかげ・・・なことは一度も考えたことはない。自分で努力して手に入れた力なんだから、感謝するのは自分自身だな。その時、その都度にそういう技術を学んだ俺、偉いぞ!
これだけ、自分のことをほめておけば大丈夫だろう。褒めるのを貯金できるかは分からないけれども、まぁ、これ以上自分ことをほめたとしても何も得られないからな。
「とりあえず一つだけ言っておくけれども、美希に無理矢理手を出したら、この世界で暮らせなくしてやるからね? 覚悟だけはしっかりとね?」
少し自分でボーっと考えていたので、凛監督の声が空っぽの頭の中にガンガンに響いた。そして、凛監督の顔をのぞいてみると、いまだかつてないほどの、俺が過去の時代にもあったこと、見たことのないような恐ろしい、まるで鬼のような顔をして俺のほうを見ていた。別にまだ俺は美希に無理矢理手を出していないんだからそんなに怒らなくてもいいはずなのに、これじゃあ怒られ損だよ。
「じゃっ、みきみきの事探してきてね! ちゃんと傘は差すんだよ? ホールの中をぬらさないために外から帰ってくる時は、しっかりと水気を拭いてからだからね!」
「はい、分かりました」
さっ、とりあえず美紀の事を探しに行くか。
――――
やはり雨ということもあって、いつものような人の混みようではない秋葉原の風景。いつもと違った風景に少し心を躍らせてしまう。この雨のにおいも好きだし、何しろ人が少ないのは一番いいことだ(仕事としては一番やなことだけれどもね)。
ステージの公演が始まるまで後二時間か・・・。裏方の人間は本番が始まる三時間前集合でほかのメンバーもすでに入ってるからなぁ。いったい美希に何があったんだろう。
一つだけ仮説を立てるとするならば、ジョンが何か美希に対して邪魔をしているとかだ。これは一番現実的で、美希が遅れているのも仕方がないだろう。それ以外だったら・・・ちょっと今は考えられないな。
まだ時間もあるから、駅のほうにも行ってみようかな。




