百四巻目 一泊したら帰りますから
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「それじゃあ、また明日仕事で会いましょう信長様!」
「じゃあね!」
信長様との会話はちょっとした緊張感があるもの非常に楽しいものだった。というか、このまま信長様とこうやってほのぼのとした会話をし続けていきたいと思うほどだった。
だけれども、いつかは言わなきゃいけないことがある。その時が来るまでは絶対に打ち明けることはしないとおもう。多分。
さて、私は今少し考えなければいけない立場にいる。それはある人物がここに不法に侵入していて、今悠々と自分でいれたお茶を飲みながら私が苦労して買ったデジタルテレビをつけながら、外国人にインタビューをするバラエティーを見ながら「本当にそう思ってるんですかね? このイギリス人は」 と私に質問してくるやつをどうやって元の家、つまりは信長様の家に戻すかをだ。
正直言うと、不法侵入したことには別に怒ってはいない。本来であれば、こういったことをしっかりと対処しなければならないところだが、もうそんなことはとても小さなことになり下がってしまったんだ。
今、私が求めるのは静かで安らげる空間であり、こんなうるさい奴を放置出来るほどの余裕はないのだ。犬によってぐちゃぐちゃに荒らされた心と体を今すぐに癒さねばならないのに・・・くそ。
「あっ、冷蔵庫に夕飯を作っておきましたからお腹がすいてるんだったらレンジでチンでOKですよ!」
・・・まったく。仕方がないから夕飯を食べてから考えることにしよう。ちょっとお腹もすいてるし。
――――
「それで、なんであんたは私の家にいるわけ?」
ジョンの作った料理を嫌々おいしくいただいた後、私は話を切り出した。今頭の中で順位をつけた中で、一番重要な問題である早くジョンを元の家に帰らせるということの最初の部分である、なぜ私の家にいるのかを明らかにしなければならない。やさしい口調で言ったから、嫌な印象を持たれないと思うけれどもちょっと眠いからもしかしたらネガティブに受け取られてしまったかもしれない。でも、ネガティブなことだからそこらへんはそういうことだ。
ジョンは、じーっと私の顔を見た後お茶を飲み、口に水分を含ませた後きょとんとした顔をした。
「さぁ、なんで私はこの家に来たんでしょうかね?」 ものすごく、不思議なトーンで言ってきた。
果たしてジョンがふざけて疑問形で私に言ってきたのか、それとも本当にわからないから疑問形でいってきたのかは分からない。ただ一つ言えるのは、もう質問なんかしないということだ。信長様には、ジョンは明日帰るはずと言ったけれども、もしかしたらもう少し時間がかかるかもしれないな。
「大丈夫ですよ! 一泊したら帰りますから」
まったく、ジョンの心をのぞく能力?はまだ健在らしい。




