十巻目 枕営業
「失礼しま~す」
この時代に来てから、太郎、ジョンと接してきたが、こんな声は初めてだ。こんなに声色が高い声なんて・・・久しぶりだぜ! ちょっとだけ、おめかしでもしたいと思うけれども、勿論おめかしする道具などないのだからそんなことをさっさと忘れるべきなのだろうがね。
ジョンの顔を見ると、俺へのお土産のはずなのにすごくワクワクしている。というか、お土産というよりかは・・・何というか形容しがたいけれども、まず、お土産ではないだろうな。
「ノブ、この時代にはものを分け合うという習慣があります」
「それって、キリスト教の考えじゃないのか?」
「宗教なんてどうでもいいんですよ、考えなんて好き勝手に使っていいんです」
「で、その習慣がどうかしたの?」
「あなたへのお土産は私からの思いですが、その思いを私も受け取ってもいいですよね?」
ははーん。こいつ元から、俺だけにこの声の主を渡す気はなかったんだな。まぁ、別にいいけれども、それって今の時代的にアウトじゃないのか?
・・・時間がかなりたった。だけれども、声の主が現れない。なぜだろうか?
「きっと、化粧でもしているのでしょう。彼女はあれでも芸能人ですからね、マイナーですけれども」
ジョンはいきなり言いだした。まるで俺の考えていたことを読み取るかのように、その考えていたことの答えを出してくれた。ちょっと怖い。
でも、芸能人なのか・・・。さらに期待できるな!
「マイナーって何のことだ!」
また、あの声が聞こえてきた。声だけだけども、こんなに幸せになれるなんて・・・さすが芸のある人間は違うな。
「ところでジョン」
「なんですか?」
芸能人と聞いて、俺もある疑問が生まれたのだった。
「その、この声の主はいったいどんな芸をもった人なんだ?」
「どんな芸・・・? そうですね・・・歌とか踊りとかそういう感じの芸っていった方正しいんでしょうかね」 ジョンはすごく悩んだ顔をしながら、そういってきた。
「逆にそれ以外何があるっていうんだ?」 また、あの声が聞こえてきた。ぞくぞくするね!
ジョンは、その声の質問に回答した。
「いや、枕営業とかの技術も芸に入るのかなと?」 すごく冷静に言っている。
「枕営業なんてやったことないわ!」 あの声の主は、声を荒げて言い返した。
人間焦るときというのは裏があるというが、残念なことに俺は枕営業と意味を知らなかった。枕でも売る技術なのだろうか?




