九十五巻目 その意見には同意します
恐ろしいというか、なんかもう良く分からない次元の犬だな。
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先ほどの不毛な時間とは全く違い、秋葉原へ向かう道のりは非常に楽しいものだった。いや、歩くたびに景色が変わっていくから、たとえ会話がなくても感覚としては時間が速く進んでいるように思えるんだ。こういうところが、歩くことのいいところなんだろう。ただ立って、黙ってどうでもいいところを見るようり何十倍もいいものだ。
「ところで生贄殿」
俺が秋葉原までの道のりがだるいからどうにかして、秋葉原へ向かって歩くことが先ほどの不毛な時間よりどんなにいいのかを自分自身に教え込ましていると、神様が俺に問いかけてきた。
「なんですか?」 俺は力の抜いてその問いかけに返事をした。
すると神様は、汗をポケットには言っていたハンカチを使って脱ぎながら「いや~色々と無駄な時間をかけさせてしまいましてすみませんね」と俺に言ってきた。なんかものすごく反省してそうな顔と、声のトーンだったから俺は、「まぁ、いいですよ」と答えておいた。このまま神様の問いかけを無視するわけもいかなかったし、強く「よくもあんな不毛な時間を作ってくれたな!」と言うこともできなかった。ただ、そう言うしか俺の中では考えることができなかった。それが今俺が考える中での最善の策なのだ。
「とりあえず、秋葉原に戻ったらバールをまず買いまして、その後小型カメラを買いに少しばかり遠くはなりますがそういった店に行きたいと思います。まぁ、バールを持ってるので警察に職質されたら私たち二人とも結構面倒なことになると思いますから二つのものを買ったらちゃちゃっと帰りたいと戻りたいと思います」
「はぁ・・・分かりました」
分かりましたと言うしかないだろう。
ここで一つ俺はあることに疑問を持った。それは、神様は一体どんな職業の人間なんだろうかということだ。もしかしたらさっきも考えていたかもしれないけれども、いきなり小型カメラを買いに行こうとか、バールを買いに行こうとか、普通の人であれば考えないし、たとえそれが今必要になったとしてもよっぽどでない限りは買いには行かないだろう。それなのに、神様は買いに行く。
やはり、神様には裏の顔それも不正の意味での裏の顔があるのかもしれないな。
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「やはり、この人の混みようと空気の汚さと独特の匂い・・・素晴らしいですね秋葉原」
「その意見には同意します」
ようやく、秋葉原へとついた。すでに日は落ちており大体十八時を過ぎた頃だろう。昼間の人の混みようとは少しだけ雰囲気が変わっていたが、どちらかというと俺はこっちのほうが好きかもしれない。




