九巻目 ・・・で!ウタッテェェエうぉい!
ドンドン
「また曲者か?」
玄関をたたく音が聞こえる。また放送協会が来たのだろうか?
だけれども、放送協会が出していなかった音が玄関の方から聞こえてくるのだ。なんというか、この時代の歌というものが聞こえてくるのだ。
『・・・で!ウタッテェェエうぉい!』
まるで化け物の声だ。だけれども、どこか恥じらいを感じる。しかし、どこかで聞いたことがある声だ・・・!
ガチャッ! 思いっきり開けてみた。本当であれば、慎重に開けてみるのが正しいのかもしれないが、俺はこの化け物の声が誰のものなのか確信を持ったのだった。
そう、この声は絶対にこの声は!!!!
「やっぱりジョンか」
「やぁ、ノブ。私はいま帰還しましたよ」
帰ってきたジョンはやけに顔が二やついていて、簡単にいえばいい笑顔だった。だけれどもその笑顔は、放送協会のような笑いではなく、心からの笑顔だった。
手元にはたくさんの袋を抱えていて、その袋の中にはたくさんの筒や、四角い箱、女の人形や、不思議なものがたくさん入っていた。どちらかというと、俺の興味をそそるものがたくさんあった。
「いや、本当に大変でしたよ」
ジョンは座布団に座りながら、袋の中に入っていた荷物を取りだした。
「あっ、これノブへのお土産ですよ」
ガサゴソと袋の中を探して、俺にお土産を手渡してくれた。
「ジョン、これは何?」
「見ての通り、本ですよ」
うん、確かに本のようだ。
「で、この本の内容は?」
「それは、あなたが見てみればいいと思いますよ」
あとで、その本の内容を見てみたら、俺が女体化して天下を狙うというなんともへんちくりんな物語だった。ものすごくへんちくりんで、ものすごく変な話だったので、こればかりは家宝にしなくては。
「あ、あともう一つノブにお土産がありますよ」
ジョンは本当にいいやつだ。誰だかわからない、こんな俺のためにいろいろと尽くしてくれて本当にうれしいよ。ありがたいと思っているしね。いずれは、お礼をしなくては。それにしても、もう一つのお土産って何なんだろうか。食べ物かな?
ジョンは咳ばらいをして、さらには深呼吸をした。そして
「入ってきてください」
と、言った。




