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Three Gem - 結晶の景色 -  作者: 赤月はる
明の年、暗の年
95/443

95 むずかしい sideニコル

  




「ほれほれ、吐きな」


「うー!やーだー!」


「ニコルにしては強情ねぇ…あ、わかった」


「うー…」


「オスカーに…言われたんでしょ、ニコル」


「!?」


「あぁ、そういうことねー。とうとう言ったか」


「!?」


「んで、自分でちゃんと答えを見つけなきゃって、考えすぎてグルグルしてるんでしょ。ムダムダァ~、考えてわかるわけないも~ん」


「な…なんでぇ?」


「「ニコル、わかりやすすぎ」」


「ふぐぅ…」



…せっかく自分でちゃんと考えるって決めてたのに、あっさりバレた…

そして二人ともとっくに知ってたんだ…私ってほんとに鈍いんだな…



「ニコル、オスカーは返事くれって言ってたの?いつまで待つって?」


「…そういうの、考えなくていいって。いつまで待つとかいう話はなくて、ただ知っててくれればいいよって」


「おぉう…やるなオスカー…見直した」


「ニコルのこと、よく分かってるよねぇ~」


「うぅ~、でも考えなくちゃ、オスカーに失礼だし…」


「んー、私は考えちゃいけないと思うなァ」


「ふぇ!?考えちゃ…いけない?って、なに?」


「考えるな、感じろってヤツでしょーよ。これからアンタは、オスカーをよく見て、自分がどう感じるのかを認識していけばいーんじゃないの」


「む…むずかしい…」


「だからねぇニコル。そーやって考えるでしょ?ニコルは固まっちゃうでしょ?そうすると今までみたいに話せなくなるかもって思わない?」


「うん、イヤだけどそうなっちゃうだろうなって思う…」


「それ、オスカーだってイヤだったと思うよぉ?それでもちゃんと言ったオスカーは勇気あるなァって思わない?そしたら、いつか自分がほんとに好きなのが誰かわかるまでオスカーに待っててもらって、それまではいつも通りにしているしかないと思うのよねぇ」


「まあねー、いつになるかわかんないけど、オスカーは待つことくらいは覚悟してると思うし、待たせてもしょーがないじゃん?それはニコルのせいじゃないしさ。ちゃんと”知ってて”あげてればいいんだって」


「う…なんか…こんがらかってキタ…」


「ニコルは真面目すぎだよぉ。オスカーにどうしても悪いって思うなら、”考えすぎるとわからなくなるから、自然にわかるのを待ってていい?”って言っておけば?無理に答えを出そうとするより、その方がオスカーに誠実な気がするなー」



…あ、そっか…

無理やり私の中にない”答え”を出そうとするから、わからないし苦しかったんだ…そっか…私が好きな人って、無理に作り出すものじゃないもんね…



「…アルマ、ユッテ…ありがと…なんか憑き物が落ちた感じ…」


「まーったく、一人で考えようなんて思うから!さっさと吐けば良かったんだっつの」


「まあ、それもニコルの真面目なトコだとは思うけどぉ~」


「うう…ちゃんとオスカーに言って、考えすぎないように考える…」


「「だから考えるなっつの、感じろ」」


「むーずーかーしーいぃっ」





*****





週末になり、兄さんたちの家に向かっています。



あれからオスカーにはちゃんと、これからも仲よくしたいこととか、誰が好きとか全然わからないから、自然にわかるのを待ちたいっていうこととか…いっぱい話しました。

オスカーは嬉しそうに笑って、「だからそれでいいって言ったじゃん。考え込ませてごめんな」といって私の頭をぐしゃぐしゃにしました。


私、なんでこんなに優しい男の子に恋してないんだろう。そりゃ、誰にも恋してないと思うし、恋ってなんですかって言われてもわからないけど…


ほんと、考えれば考えるほど、オスカーは私にもったいないほど優しくていい人だ。そんな人に好かれてると思うと、すごく自分に価値があるような気持ちになって嬉しい。



あれ…そういえば…ヘルゲ兄さんて、たくさんモテて…なのに、「自分に価値がある」って思ってる感じがしない。


私やアロイス兄さんをすっごく大切にしてくれるのはよくわかるんだけど、私たちがたくさんたくさん「ヘルゲ兄さんが大切だよ」って伝えて、それでようやく少しだけわかってくれた…ううん、未だに自分に価値があるって、よくわかってないような…


ヘルゲ兄さんて、自分のことが、キライ…なの?


あれ…なんか引っ掛かる…

…ううーん、わかんない…




そんなこと考えながら、兄さんたちの家に着いた。



「ニコルでーす、入るよー?」


「はーい、どうぞー」



いつものアロイス兄さんの声。おいしそうなお菓子の匂い。



「あれ、ヘルゲ兄さんは?」


「あー、もしかして部屋で寝てるかも。昨日パズルやってたからなー。起こしてきてくれる?」


「ハーイ」



ヘルゲ兄さんの部屋のドアをノックするけど、返事がない。そーっと開けたら、いつかの不思議な夢を見たときみたいに、端末の前の椅子で寝てる。


あの時と同じようにきれいな寝顔で眠るヘルゲ兄さん。

今日はマナの光じゃなくて、お日さまが黒髪を光らせてる。


なんだか、心臓がきゅうっとした。

こんなにきれいな人が、自分の事をキライなのかもしれないなんて。

こんなに優しい人が、自分に価値がないと思ってるかもしれないなんて。


ありえないよ、ヘルゲ兄さんは誰よりもすごい人なのに。

…もしかして、あの子…怖がったまま、ヘルゲ兄さんの中にいるのかな…




あの子を泣かせたのは、誰?

あの子を怖がらせたのは、誰?


絶対許せない。絶対、許さない。

二度とあの子に手出しさせない。

ぜったい、わたしがまもる




「…ニコル?来てたのか、起こせばいいのに」


「…ん?あ、そうだ…起こしに来たのに呆けちゃった…えへへ」



…今の、なんだろ…

なんか、今まで感じたことないような怒りだった…



ヘルゲ兄さんが声をかけてくれた途端、すうっと潮が引くように消えた、怒りの感情。私の感情なのに、不思議な感覚…





んあ!?私ってば、オスカーのこと考えなきゃいけないのに!いつのまにかヘルゲ兄さんのことばっかり考えてた!あ、違う…考えるな、感じろ、だっけ…


ふあぁ、むずかしぃ~っ!






  

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