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Three Gem - 結晶の景色 -  作者: 赤月はる
明の年、暗の年
92/443

92 クラブコーチ sideコンラート





学舎で習う格闘術や武術をあらかたトレースし終えたメガヘルは、定期的に三人娘やオスカーの相手をしに行くようになった。

もちろんメガヘルだけで学舎まで歩かせたら騒ぎになるんで、俺かアロイスが小脇に抱えて連れて行くことになる。

…大層な赤っ恥だぜ、コレ…



俺も今は毎日仕事があるわけでもないっつうイイご身分なんで、あいつらの訓練につきあってやってる。おかげで4人ともかなり腕前を上げていると思う。



ユッテはスピードやバネを活かして、剣舞とでも言えるくらいに刀剣の扱いが上手い。打刀もいけそうだが、本人は短刀が好みで二刀流が様になってる。とてもじゃねーが、後方から爆撃が基本の魔法使いとは思えねー好みだ。最前線の特攻隊か、隠密部隊にでも行っちまいそうでこえーよコイツ。


オスカーは打刀や大太刀だな。そんなに筋肉バカって感じでもないんだが、たぶん体幹がしっかりしてんだろう。あとは柔術に捕縛術もなかなかだ。パンクラチオンみたいな打撃系やグラップリングもやれて、コイツもいったいドコへ行くんだって感じの身体能力だな。


ニコルちゃんは本人も言ってたとおり、棍が好きみたいだ。突出した攻撃力はないが、動体視力がいい。俺の本気半分くらいのスピードなら、乱取りもついてくる。15歳の女の子でこんだけやれりゃあ、大した反応速度だ。


アルマは…なんつうかな…一応どの武術も、型はソツなくこなす。突出したスピードや筋力はなく、どちらかというとおっとりしてるんで覇気に欠ける感じなんだが…だが、しかし。

合気柔術、だな。笑顔でホワッとした空気を纏ったまま、スルリと寄ってきて関節キメちまうとこがある。俺は、何気にアルマが一番こえぇ。俺の後にシュヴァルツに来るのがアルマだったとしても、俺は不思議に思わねぇ。


暗器教えてみよっかな…学舎の授業にそんなん無いけど。きっと教えるっつーたら嬉々として使えるようになっちまいそうだな。


…うん、アロイスに殺されるからやめとこう。






ぶはぁ、今日もいい汗かいた。

あとはメガヘルを見て一緒に型を練習してろー、と言って俺様は一休み。連続で4人のエネルギッシュな15歳相手にしてみろ、誰だってこうなるってんだよ…



「今日もお疲れ様、コンラート。4人ともほんとに熱心なのね…」



ナディヤがレモン水を差し出してくれる。手が空くと何かしら差し入れに来てくれて、4人とも喜ぶんだなコレが。俺の彼女最高。


今日はリアも見に来てる。興味深そうに4人が練習しているのを見て、感心しながら言った。



「はぁ~、中央のクラブ制度って遊びだと思ってバカにしてたけど…こうも熱心だと捨てたもんじゃないわよね」


「クラブぅ?なんだ、そんな正式な活動なのかよコレ。じゃあ部外者の俺がやってちゃマズいんかな」


「そんなわけないでしょ。身元がこれ以上ないほどしっかりしてて、現役の軍人ががっつり指導してくれんのよ?見なさいよ、あの子たち…中等だってのに、入隊直前の高等3年も真っ青な仕上がり具合じゃないのよ…どんだけ本気で指導したの?」


「うぇ?高等3年ってあんな感じだっけか?…なんか俺、やっぱり軍で感覚オカシくなってんのかな…あの程度アリアリだと思ってたんだがよ」


「ふふ、それだけコンラートが強くなってるってことでしょう?ヘルゲは突き抜け過ぎてて、ユッテたちの自信がなくなっちゃうだろうし。相手に合せて指導できるんだから、コンラートは優秀なコーチだと思うわ」


「あ~、それは言えるわね。ヘルゲの乱取り見て、ニコルも顔が青くなってたもの。私たちだって、よくアレ見てて心が折れなかったもんだわ」



カラカラ笑うと、リアは4人と一緒になってメガヘルの演武を見ながら型を始めた。…でも同期だから俺らは知っている。リアは壊滅的に運動神経がないんだ…同じ演武をしているとは思えない動きで、4人に呆れた目で見られてる。そしてそんなことをケほども気にせず動けるリアはすげぇ。



「この前ね、ユッテが嬉しそうに言うのよ」


「んあ?」


「”コン兄が来てくれてよかった。ナディヤ姉も守ってくれるし、私らに力も付けてくれる。最近むやみに何かを怖いって思うことが少なくなった”ですって」



…だーかーら。

不意打ちヤメテ、ナディヤさん。



「…そーかぁ?俺ァ暇つぶしにあいつらシゴいてるだけだぜ?」


「ふふ、私に照れ隠ししてもだぁめ。今日は晩ごはん、何がいい?」


「…とんかつ…キャベツの千切りマシマシで…」



くっそ~、かわいーなナディヤ!つれぇ!かわいすぎてつれぇ!




「はいよ、そこのバカ夫婦!そんな寸劇は帰ってからやれ、ドちくしょう!」



リアがドカドカ足音させながら屋内訓練場を出ていく。

…お前はいいやつだ、リア。わかってるぜ。お前に付いていける忍耐力を持ったナイスガイが早く現れることを、俺はいつでも祈ってるからな。



「もう、リア…夫婦だなんて…もうっ」


「…”バカ”は抜けて耳に入ってるんだね、さすがだよナディヤ姉」


「んじゃ、片付けよーぜ。晩めしなにかなー、肉がいいなー」


「オスカー、お肉ばっかりじゃなーい。血液ドロドロになっちゃうよぉ~?」


「私もおなかすいたなー!デザート何かあるのかなぁ」


「ニコルは糖分控えないと、おなかプヨプヨになるよぉ?」


「ふえっ…だ、大丈夫だもん…いっぱい運動したじゃない…」


「ニコルちゃんにあんまし菓子やらないように、アロイスに言っといたほうがいいか?」


「「「「ええぇぇぇっ、それはダメ!」」」」


「なんだよ、ナディヤまで…」


「ダメ!そんなこと言ったらホルマリン漬け画像、大公開しちゃうんだから!アロイス兄さんのお菓子は特別なの!」


「…ちょっと待てぇ!ホルマリン漬けって…あれかっ!…ニコルちゃん?魔石はドコかな?」


「知らないもーん、私持ってないもーん」


「…わかった、菓子の件はノータッチで…」





…くそ、アロイス…お前の餌付け技術、どんだけの威力なんだよ。

そんで問題はヘルゲの野郎だな…ホルマリン漬け画像だとぅ?俺様の隠密技術でいつか魔石を取り戻してやっからなァ…






  

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