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Three Gem - 結晶の景色 -  作者: 赤月はる
明の年、暗の年
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87 閑話 リア

  





「うん、そうそう。つまり瑠璃一族は元々宰相を排出していた、政治的に非常にバランス感覚のいい人々が多かったってことなの。端的に言えば”賢い”人々だってことなんでしょうけど、大国に併呑されてからは財務も任されるようになった。そうなると…悪い方向に”賢く”立ち回る人も出て来てしまったのね。それがこの”瑠璃横領事件”の要因だと言われてるの」


「へぇ~、じゃあ財務にはあまり免疫がなかったのかな?政治的なことだけ得意だったの?」


「ん~、もちろん財務だって重要な国の要素だからね、わかっていたでしょう。それでもいきなり紫紺の金庫を任されたら…規模が違って、目が眩んだんだと言われてる。これ以降、紫紺とマザーがダブルチェックして監督するようになったから、そんな事件も起きてないのよ」


「ふうん…ねえ、リア先生。紫紺一族って…なんでこんなに何でも規模が大きいんだろ。人口だってこの国の大半が紫紺だし。でも中枢の紫紺のイメージと一般人のイメージの乖離が大きい気がするし…なんかチグハグなんだもん」


「…ニコルって時々、妙に鋭いトコ突くわね?そうね、ちょっと話が飛ぶけど、ニコルって”カナリア”を知ってる?」


「金糸雀一族って、語り部がいて…芸事に優れてて…」


「そう、でもその中でも特殊な語りが歌える声帯を持つ人のことを、特別にカナリアって呼ぶの。それと同じようにね…紫紺にも特殊な人がいるのよ。それが中枢にいる紫紺よ。彼らは常人にはありえないほどのカリスマ性を持っていると言われてる」


「 ? カリスマ性って?」


「ん~、人を引き付けてやまない魅力というか…この人の為ならなんでもする、と心酔してしまうオーラというか…中枢の紫紺は、これが”神からの賜り物”と言われるほどの強力さで備わっているという話ね」


「ほああ、そんな人いるんだぁ…なんか強力な魅了チャームみたいだね…」


「ほんとよねー、でも魔法じゃなくて持って生まれたモノだって話よ。私は会ったことなんてないけど、逸話ならたくさんあるもの。まあ、そのカリスマ性に心酔したたくさんの人々が集まるものだから…自称”紫紺一族”の一般人がすごく多いのよ。元々の純血な紫紺じゃないけど、大国の誕生以前から紫紺に忠誠を誓った人が一般の紫紺なの」


「あ~、なるほど…だからチグハグなんだ…」


「そういうこと。まあ、主要7部族って呼ばれるところは大なり小なりそういった特殊なところがあって、ある程度の自治権とマザーが与えられるでしょ?そうなるとあまり他部族間の婚姻も少ないから特性も守られてる部分があるの。でも紫紺はねぇ、一般の紫紺との混血も進んでて、中枢を担う紫紺が生まれにくくなっているって話もあるわね」


「…そっか、でも他部族間の婚姻は禁じられてはいないんでしょ?もしかしたら紫紺の中に、白縹が生まれてる可能性もあるのかな!もしそうだったらスゴイね、お友達になれないかなあ~」


「ぷは!なるほどね~、そりゃ恋愛は自由だもんね。紫紺の中の金糸雀とかだって、いても不思議じゃないけど…まあ、確率は非常に低いでしょうね」


「なんで?あ、”であい”が少ないから?」


「ニコルぅ…なんかアルマに吹き込まれたわね?そうじゃなくて、慣習の違いすぎる他部族とは、価値観も違いすぎるからよ。例えばね、ニコルが恋した人が『国の為に必要だから、ユッテとアルマの恥ずかしい秘密を俺に差し出してくれ』って言ったら、ニコルは『うん、好きだから全部話す!だから私をもっと好きになって!』とか言える?」


「ひぇ…なにそれぇ…そんな人怖いってば、話すわけないよ!それに私そんなこと言わないもん、なんか気持ち悪~い…」


「あは、でしょ?でも山吹にはそういう人もいるでしょうねぇ」


「えっ、うそぉ~…いるの?」


「ね?ニコルが気持ち悪いって思うことが平気な人に、恋なんてできないもの。だから他部族間の婚姻は少ない。逆に山吹の人は『白縹ってこんなことで気持ち悪がるの?そんな理解のない人なんてヤダぁ』って思うかもね?」


「はぁ…なるほど、価値観の違いかあ。さらっと言葉で聞くのと、実際どういうことなのかっていうのとじゃ全然違うね…」


「そういうことね~。ま、どの部族にだって物好きもいれば、他部族の子と気が合う価値観を持った人もいるだろうから。そういう人と巡り合っちゃったら、恋もいいんじゃないかしらね」


「…リア先生は、どんな恋したの?」


「…大人の秘密はそう簡単に暴かせないわよ、ニコル」


「うぅ~、だってリア先生もてるじゃない…ちょっと興味深々な生徒に教えてくれても…」


「そんなのナディヤとコンラートに聞きなさいよ!」


「えぇっ、そんなこと聞いたらナディヤ姉さんの”コンラート物語”が十章分語られちゃうよお!私寝かせてもらえなくなるってば」


「わかってるわよそんなこと!私は昨日三章分語られて逃げてきたの!あれを飽きずに楽しそうに聞けるフィーネがおかしいのよっ」


「フィーネ姉さんて、やっぱスゴい…」


「フィーネのは人物限定の愛情過多、オスメス関係なしの暴走愛情キャラバンなの!」


「リア先生が意味不明なこと言ってるのに言いたいことがわかる…なぜ…」


「ナディヤは普段キチンと抑えが利いてるくせに、コンラートのことになると暴走愛情ペガサス!リミッター外れると空まで駆け上がって、地上が見えなくなるのよ!」


「リア先生、私が悪かったです…お願い、落ち着いてぇ…」


「…悪かったわ、ニコル…地上にはいい男がなかなかいなくてね…」


「え、そうなんだ…」


「ま、私はこれから会う予定だから。ニコルは…そうね、性格重視でいきなさいよ?顔面品質検査なんてやったら、あなた一生相手なんて見つからないから」


「…え…うん…」


「ほんと、なんでこう…性格も顔もほどほどでいいのにね…バランスのとれた男というのは、逆に希少なの?バランスってレア・ユニークなの?じゃあ私は高望みしてるの?…んなワケないでしょ、周囲の男どもがおかしいのよ!」


「リア先生、私そろそろお風呂いってくるね…」


「私ってもしかして男運がめっちゃ悪いとか?え、そんなこと言ったらいい男と出会う確率は神の領域ってことになるじゃない?私の努力はドコいった?男運の存在なんて私は認めないわ」


「あの、いろいろ勉強教えてくれてありがとう…おやすみなさーい…」


「私は神にも逆らう女よ!どんと来い神罰!…ん?ニコル?あら?もう帰ったっけ…まあいいわ、図鑑見て心を静めますか。あぁ、心のオアシス…」








  

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