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Three Gem - 結晶の景色 -  作者: 赤月はる
明の年、暗の年
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83 近況のご報告です sideニコル

  




中等5年になって、各セクトの配置予定者ごとに少しだけカリキュラムの違いが出てきました。

軍部セクト予定者は主に運動能力向上や応用修練の強化、それに方陣の勉強。つまり魔法の練習ですね。

維持セクト予定者は、村の維持・運営の細かな仕組みや組織としての役割の勉強。商業的な財務経理の勉強もあります。

養育セクトは大きく二つに分かれていて、人工受精システムと人工子宮システムを管理する「産出課」と、生まれた子供たちを養育する「養育課」になります。産出課の予定者はシステムの仕組みや管理方法を、養育課は教育者やナニーとして児童心理学や教育に関する勉強をします。


高等学舎で本格的に勉強することなので、私たちはまだ触りの部分だけですけど。




軍部の訓練では、運動が増えるので体力的にけっこうきついなーと思います。ユッテやオスカーは嬉々としてやってますが、私とアルマはヘロヘロです…


応用修練では大規模魔法の習得に向けて、ハードルが上がります。マナの収束や放出する際の座標設定の精度を上げるためです。すでに大規模魔法を撃てる域に達している早熟な子もいたりするので、低レベルな出力の中規模魔法しか撃てない私は目立ちます。


あの冬の品質検査以降、私が宝玉級になったという噂が流れてしまっていました。自分で言いふらしたわけじゃないけど、どんな影響があるかも考えずに食堂で普通にアルマたちと話していたのは迂闊だったな、と今は思います。


だって、宝玉級のくせにあんなお粗末な魔法しか撃てないんですからね…努力して資質を上げて軍部予定者になった人から見たら、文句の一つも言いたくなりますよ。


実際、「濁り玉みてーなちゃちい魔法撃ちやがって…やる気失せるわー」って言われましたし、軍部に行きたかったけど選出に漏れた人からは「あんなんで軍部行けるなら、私も基礎修練だけ頑張って宝玉狙えばよかった」っていう悔しそうな声もありました。

あ、濁り玉っていうのはいわゆる蔑称です。濃い白霧が取れない、ひどい未熟者っていう意味ですね。


その度にユッテとオスカーがケンカを買ってしまったり、アルマが「むりむり~、そんなイヤミ言う人が宝玉になれるほど到達度あげられるワケないからぁ」と毒な返事をしたりと、私が怒ったり文句言うスキもありません。

まあ、トロいのでイヤミを言われても少し経たなきゃ気づかないっていうのがいけないんですけど。





まあ、それでも概ね私は元気です。


軍部配置予定者にはユッテもアルマもオスカーもいて、基本的にはいままで通りとても楽しい毎日です。それに、やっぱりコンラート兄さんが戻ってきてるのが大きい!私、今ではほとんど毎週末兄さんたちの家に泊まりにいっていて、コンラート兄さんも一緒にごはんをワイワイ食べたりします。


コンラート兄さんはたまにいない時もあって、きっと自分のおうちでナディヤ姉さんの手料理をごちそうになってるんだろうなって思います。ナディヤ姉さんはすっごくお料理の腕があがったみたいだって、アロイス兄さんが言ってました。


アロイス兄さんは図書館などで検索したレシピからレパートリーを増やしたそうですが、ナディヤ姉さんは食堂のおばさんからの直伝。ちょっとした工夫や、合わせ調味料の知識。サッと短時間でできるおいしいお惣菜などの知恵が豊富なのだとか。


コンラート兄さんは「俺はヘルゲの”説得”で忙しいからなぁ~、ここで待機、待機っと」といいながら、楽しそうにヘルゲ兄さんとケンカしたり、アロイス兄さんと学舎の話をしていたり。フィーネ姉さんと通信で話しては、ヴァイスの仲間がこんなことやらかしたらしいぜーと、楽しい話をしてくれたりします。




ヘルゲ兄さんは、相変わらずです。魔法部のお仕事をしたり、パズルやチェスをしていたり。


でも私がいくらやっても収束ができなくてムキー!ってなってたりすると、お昼にはだいたい食堂まで迎えにきてくれます。なんでわかるのかなあ。ヘルゲ兄さんが言うには「深淵を伝わって、なんとなく感じるようになった」って言うんだけどね。


深淵って皆すごく怖がってるのに、ヘルゲ兄さんは平気みたい。私たちみたいな先祖返りは、心に壁がないかわりにおじいちゃんみたいな守護があって、深淵でも自分を保てるから歩けるんだって。

私も歩いてみよっかな?って言ったら真剣な顔で「まだダメだ。ニコルは爺さんの言うことが完全には理解できないだろう?まだ深淵で自分は保てない」って怒られちゃった。うーん、やっぱり未熟なんだなあ、私…



でもヘルゲ兄さんがそうやって私の気持ちを察知してくれた日は、海を見に行ったり、草原で寝転んだりして気持ちよく過ごせる。


なんだか、ぼんやりしてるとね。バイパスのあるあたりから、ほわーんって暖かい気配が入ってくるの。ヘルゲ兄さんの気配とか、アロイス兄さんの気配とか。心配してくれる気持ちや、ただ隣にいて一緒にぼけーっとしてくれる優しさとか、ささくれた心を治すお薬みたいなのが入ってくるの。


それで、私は今日も元気いっぱいのニコルに戻る。


へこたれませんよ、兄さんたちがいる限りね!







  

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