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73 文句と会議とぬいぐるみ sideアロイス

  





「がおぉぉぉっがおぉぉぉっがおぉぉぉっ」


「…ヘルゲ、出ないの?」


「がおぉぉぉっがおぉぉぉっがおぉぉぉっ」


「コンラートだ、どうせ文句言いたいだけだろう。俺はこのアクアパッツァを食うのに忙しい」


「がおぉぉぉっがおぉぉぉっがおぉぉぉっ」


「もー…だったらサイレントモードにしとけばいいのに…あれっ着信音止まったね。次は僕の方に来るんだろー?…ほら~…」


ぽすっぽすっぽすっ

ぽすっぽすっぽすっ


「あー、はいはいコンラート?」「…何で出るんだお前…」


『ヘルゲぇ!居留守だろ、わかってんだぞこのシスコン!せっかくナディヤと話そうってのに、雷撃付きムーンサルト仕込むとかどういう了見だゴルァ!』


「うるさいやつだな、ニコルに余計なことを吹き込んだ仕置きだ。だいたいムーンサルトなんぞ指示していない。俺が指示したのはハイキックとのコンボだ」


『だ・か・ら、問題点はソコじゃねーわけだよ、このアホ兄貴…!つかムダに高性能な動きさせてんじゃねぇよ!』


「でもさ、ヘルゲがそれ仕掛けたのって何日か前だよ?ずっとナディヤと話してなかったのが意外なんだけど」


『は?ナディヤとは二日と空けずに話してるぜ?』


「…ちっ盲点だった…ナディヤからの着信には反応させていなかった…」


『きーこーえーてーるーんーだーよ、クッソヘルゲ!』


「やかましい。アロイス、切れ」


『こンのー…なんだ、今メシ食ってたんか。アロイス、悪かったなジャマしてよ。あー、んじゃ後で会議通信くれや。フィーネからの情報がある』


「うん、わかったよ。じゃあまた後でね」




ミニロイを操作すると、ヘルゲは苦々しい顔をしながら言った。




「だから出るなと言った。メシがまずくなる」


「ヘルゲがあんなの仕込むからだろー?コンラートの鼻、赤くなってたよ?」


「知るか。俺は手落ちにガッカリだ。やはり仕置きはお前のようにうまくいかん」


「何の賛辞かな、ソレ?」


「すまん」





*****




『…まー、大方の内容はそんなもんだ。当面の問題は山吹とホデクか?他の部族の情報は俺じゃわからんかったがよ』


「…そっか。フィーネもつらい思い、してたんだな…はは、でも”悪食”っていうのがフィーネらしいね」


「コンラート、フィーネに計画を伝えておいてくれ。あいつの頭脳と能力は希少だ。だが、俺やニコルのことは必要最低限にしておけ。…負担になる」


『了解。ま、あいつなら負担とか思わねーだろうけどよ。あまりあいつが気負わない程度に、お前がフィーネを利用する気満々だって言っとく』


「そうだね、女の子に無理させちゃだめだ。コンラート、フィーネが無茶しすぎないように言って…も、聞かない…かな?」


『あー、んじゃナディヤにそれとなく言ってもらうか…その方が素直に聞きそうだ』


「うん、それはいい考えだね」


「…コンラート、さっきの話で金糸雀と緑青の情報のことなんだがな」


『おう、金糸雀の語りで”とこしえの安寧の国から緑青来たる”っつーやつか』


「あの童話の宝玉狩りの国は、平和がずっと続く国になったんだよな。関係あると思うか?」


『どうだかなぁ。だいたい、この情報をなんでフィーネが伝えろって言ったのかも俺ァわかんねえ』


「…フィーネの感覚で、重要って感じたものなのかもね。フィーネも意味がわかってるとは限らないけど、僕は聞いてみたほうがいいと思うな」


「デボラ教授なんだが、例のマザーのロジックの原型を作った天才の子孫だか家系だっていう話を聞いていて、気になってな。…すまん、俺もあまり整理がつかないまま話しているんだが」


『あー、そういうことってあるよな。俺はそういう感覚があったら捨てねーで心に留めておくがなー』


「そうだね、何かピースが嵌ればわかるのかもね。…それより僕、山吹が怖いんだよねぇ…分体にアクセスできないんだっけ」


「ああ、俺が見てるのは同期で本体のロジックに拾い上げられた分体の情報だからな。フィーネが見つけていなければ、俺たちがそれを知ったのはもっと後…山吹の高官がニコルを使いたいと、中枢に稟議を提出してからだったろうな」


『どう対処するか、案はすぐに出るか?』


「…フィーネと話がしたい。…不便だな、近いうちにフィーネ宛に通信機を送ると伝えてくれ」


『あー、それがいいな』


「何のぬいぐるみがいいか聞いておいてよ。希望が無ければニコルにおまかせになるけど」


『…そりゃフィーネは女の子だからいいけどよ、なんでぬいぐるみがデフォルトなんだよ…』


「もう今さらでしょー。あ、そうだ…ホデクって人はどうするのさ?」


「ホデクは、俺がマザーに本当に甘やかされて育ったのかを確認したいんだろうな。その上で俺を釣るエサが白縹のマザー限定なのか、本体のマザーでもいけるのかの調査ってとこか。一応ウラは取るつもりだが、本体で充分だと納得させないといかんだろうな」


『あー、確かにな。こっちは運用開始時は本体のそばにいる必要があるんだし、あっちはあっちで軍に戻すにゃ本体で済ます必要があるもんなぁ』


「なんでわざわざ足を運んで手配してるんだろう…コンラートが疑われてるからかな?」


「いや、俺を警戒してるんだろう。俺は『マザーの端末にへばりついている』と聞いたんだからな、当然の反応だ」


「ああ、なるほどね…てことは、やっぱりヘルゲはホデクって人にマザコンぶりをアピールしなきゃいけないわけか」


「…」


『…きめぇ…』


「お前、俺の改良版の仕置きを受けたいんだな」


『イヤに決まってんだろうが!』


「はいはい、二人とも僕の・・お仕置きを受けたくないならもうやめようね」


「わかった」『おう…』



この日の会議はここでお開きにし、コンラートは遅い時間にならないうちにナディヤと話す!と通信を切った。


やっぱり宝玉級の情報は、思いもしないところに影響を与えている。


僕らで本当にニコルを守り切れるんだろうか、と少し不安になってしまうけど…いや、弱気になるのはいけない。過信もいけないけど、逃げ腰では絶対にニコルを守れないんだから。




そんなことを思っていたら、ナディヤから通信が入った。

珍しいなぁ。



「やあ、こんばんはナディヤ。コンラートと話してたんじゃなかったのかい?」


『こんばんはアロイス。そうなの、いま着信があったんだけどね?ちょうどニコルたちが部屋に来てて見つかっちゃったの…』


『アロ兄~、こんないいのナディヤ姉にだけズルいよ!私にもちょーだいっ』


『生徒はダメだってば、私だって持ってないんだよユッテ』


『そうそう、それよりコンラート兄さんとの語らいをジャマしちゃったんだからぁ、早く用件言わないとダメなんじゃないかなぁ~』


「…すっごい状況だねぇ…ユッテもアルマも、内緒で頼むよ…?」


『わーかってるって!どうせヘルゲ兄の変態魔法でしょ』


『あ、アロイス兄さん!あのね、フィーネ姉さんの通信機はミルクティーみたいな色の子犬がおすすめっ!皆みたいに髪色でお揃いにしてっ!お願いぃぃ』


「あ、その話ね…決まるの早いな…でもフィーネの希望も聞いてってコンラートに言ってあるんだよ?」


『ふふ、コンラートは”捜査用の訓練犬みたいなやつだから、ちょうどいいんじゃねーの”って言ってたわ。フィーネも喜ぶと思うわよ?』


「それでいいんだ…うん、まあわかった。準備しとくよ、ありがとう」


『きゃっほー、かーわいい!アロイス兄さん、ころっころでぷりっぷりな子犬でお願いしまっす!』


「はいはい。あんまり夜更かしするんじゃないよー、みんなおやすみ」


『はーいっじゃあねー』



…元気だなぁ…



「ニコルは楽しそうだったな」


「あー、ほんとにナディヤに懐いてるねあの三人は。ヘルゲ、通信用の魔石はどれくらいでできる?」


「まだストックがあるからな、明日にはできる」


「んじゃ僕は…あー、平日だしニコル連れていったらまた貰い物の嵐だし…一人で行くしかないかな、あの可愛らしい店…」


「…頑張れ」


「…君もマザコンの練習しといてね、頑張って…」


「「はぁ…」」








  

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