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69 緑の夢 sideヘルゲ




「…そういう訳でな、そっちでニコルの情報に注目していそうな人物がいたら教えてほしい。対処できるようなら対処したい」


『おー、了解。…しっかしすげぇなニコルちゃん…実質、14歳で”ぎょく”ってことじゃねぇか。軍でどういう扱いになるかなんて、ちょっと考えたくもねぇな』


「ああ。いま軍にいる玉は戦場に出ずっぱりだからな。…しかも最前線だ。計画を前倒しにする必要が出るかもしれん」


『わかった。今んとこ俺は軽い任務を振られてるだけだ。たぶんバジナ大隊長とホデク隊長で、俺をもう一度村へ派遣する根回しでもしてるんだろ。そっちの進み具合はどうだよ』


「しばらく前に手は打った。立体複合方陣の完成品・・・を提出してな、今までの比ではなく多角的な思考ができるものだ。そのかわりにマナを莫大に喰うから、このパッチを正式にあてたら最後、演算速度が20%は落ちる」


『…相手を高性能にしちまって、計画はイケんのかよ?』


「問題ないな。ロジックが弄られていないんだから、出てくる思考結果は大差ない。俺の仕掛けが成功してロジックに作用しても、ある思考結果が出てこなくなるだけだ。だから表面上は出た結果に多角的な理由がついて、より人間が納得しやすいものになるということだな。それよりも、一時的にでも演算速度が落ちる方が重要なんだ」


『つかそれ、採用されんのか?…ま、採用されれば運用開始時が開戦ってことか。間に合うのかよ、仕掛けは』


「間に合わせる。立体複合方陣の中に相当数のセンテンスを潜ませてあるからな、進捗は一気に進んでいるんだ。今頃デボラ教授は立体複合方陣に興奮しながら検証作業に夢中だし、今の検証用演算回路では解析に相当時間がかかるんでな、時間も稼げる。元々、人のように滑らかな思考をマザーに持たせたいというのが、デボラ教授の野望だ。演算速度が落ちてでも採用したがるだろう。以上だ、何か穴がありそうか?」


『ハァ~、デボラ教授が不憫に思えてくるぜ、俺』


「フィーネ風に言うなら、極上のゴチソウを献上したと思うんだが?」


『そりゃそうだがよ。ああ、フィーネは分体に方陣仕掛け終わったみたいだぜ』


「…早いな」


『ほんとお前、ああいう人種にエサ与えるのうまいよな。自分からガンガン立候補して、全部族の分体検査に奔走しててよ。俺よりヴァイスの宿舎に不在だったぜ?』


「そうか、礼を言っておいてくれ」


『おー、会えたらな。んじゃ、とりあえずニコルちゃんの件で変な動きがないか探ってくるわ。またな』


「おう」




…これで、俺が軍へ戻る布石は敷けたと思うが。俺の視野は狭いからな、アロイスとコンラートの二人に意見を聞けるのは助かる。


あの立体複合方陣の検証は…少なく見積もっても半年はかかるだろう。その間に少しは改良する素振りをして、効率性を高めて…演算速度は最終的に18%ダウンくらいで抑えたいもんだな。


デボラ教授がどれだけ早く動くかにもよるが、コンラートが派遣されて、俺が魔法部から解放されて、軍部に戻って…運用開始時には本体の近くにいないと。タイミングが重要だ…あの緑を守るには…



ニコル…



思考が、エメラルドグリーンの草原に染まる。

考えに没頭しすぎて、知らずにダイブしていたか…

美しい、俺の緑。

あれ以上の色を、俺は見たことがない。


どんなに世界が美しいかを認識できても、新しい感情の扉を開け続けても、あれ以上俺の心を捉えて離さない色が、ないんだ。



…俺は緑の夢に呑まれ、そのままうたた寝していた。







  

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