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63 大丈夫 sideニコル




オスカーがお昼ごはんを食べながら、「うー、何かないかな…」とぶつぶつ言ってる。私もアルマもユッテも、少し呆れながら聞いてます。なんかね、コンラート兄さんをぎゃふんと言わせたいんだって。



「オスカー…軍人相手に弱み探そうとか無茶もいいとこじゃん?しかも相手がコン兄とか…返り討ちにあって、あんたが無様さらす確率が高すぎだっつの。次は砂の上に出てるのが足かもしれないんだよ?」


「えぇ~、それ面白いねぇ。卒舎記念の上映会で、最高の笑いが巻き起こると思うなぁ」


「お前ら…つかアルマが何気に一番ヒドいぞ…」


「でも、コンラート兄さんってほんとに強いと思うよオスカー。普段の生活の中でもね、身のこなしがこう…野生動物みたいなの。楽しいとぴょんぴょん飛び跳ねて遊ぶのに、獲物見つけた途端に豹変するっていうか」


「う…ニコルに言われなくてもわかってるよ…コン兄は本気出させるとヤバい。ちっせー頃から体に叩っ込まれてるって」


「…諦めればいいのにぃ。それに今すぐが無理なら、地道に自分が力をつけるべき。デショ?」



アルマのもっともな意見に、私たちがうんうんと頷く。オスカーも「わかってんだけどよ…くやしいっつーか…」とテーブルに突っ伏した。んー、泣かせてもらった・・・・・・・・っていうのがプライドに障るわけね…



「んじゃ、私は森に行くね。オスカー、積極的に協力はできないけど…何か兄さんたちから聞けたら教えてあげる。だからあんまり煮詰まっちゃダメだよー?」


「おう…まあ、無理に聞かなくていいからな」


「うん、わかったー。じゃあいってきまっす!」





森へ向かうと…あれ?ナディヤ姉さん?



「ナディヤ姉さん!」


「あら、ニコル…今から森へ向かうなら一緒にいいかしら。アロイスに呼ばれてるの」


「そうなの!?もっちろん、一緒に行こうよ~!」


「…私が行ってもいいのかしらね…なんだかヘルゲに悪いわ」


「何言ってるのー、森は誰のものでもないよ。…まあ、独占してるような私が言うことでもないけど…」


「ふふ…周りが勝手に遠慮して森に来ないだけだものね、ニコルたちが独占してるわけでもないのは、わかってるわよ?」



そういって、ふんわりとナディヤ姉さんが笑う。あー、この顔が好き…ミニディアを猫にしちゃったけど、うさぎでも良かったな…ナディヤ姉さんて色気があるのに清潔感もあるっていうか、怪しい魔女じゃなくて妖しい魔女みたいなミステリアスな雰囲気があって、ああでもこの笑顔はやっぱりうさぎさんでも良かったかも…



「…ニコル?あ、わかった…また楽しいこと考えてほんわかしてたんでしょう?今日は何の動物のことかしら」


「んー…ナディヤ姉さんは猫とうさぎ、どっちが好き?」


「えぇ?んー、そうね…猫かしら」


「ほんと!?やったあ、私スゴイ!」


「??」



おしゃべりしながら歩いてると、おじいちゃんの木が見えてきた。

…おー!今日はコンラート兄さんもいるぅ~!



「あ、コンラート…」


「よー、二人とも一緒に来たんか。こっち座れよ」


「ニコルはこっちだ」



ナディヤ姉さんはコンラート兄さんの隣に。私は指定席の、兄さんたちの間。

もしかしてあれかな?あれかな?



「はい、んじゃこれコンラートが渡して説明してあげて」


「おー」



案の定、ちっちゃい黒猫ミニディアをナディヤ姉さんに渡してる。コンラート兄さん、平静を装ってるけどほわほわ空気出てるなー。ナディヤ姉さんが目を丸くして説明を聞いてるのが、かわいくて仕方ないって感じ。



「ニコル、顔がほにゃけてる」


「あ!しまった…ありがとうアロイス兄さん…」


「まあ、気持ちもわかるけどね…リアに補足説明もらうまで、僕も誤解してたんだけど…ナディヤはものっすごい純情さんみたいでね。きっと照れて収集つかなくなるから、なるべく抑えてね」


「うん、気合入れる。大丈夫っ」


「ナディヤが嬉しそうな顔をしているな。アロイスの言うとおりか、さすがだな」


「だろ?コンラートがすごく悩んでたんだよ。たぶん中央に戻ったらしばらくこっちに来れないだろ。またすぐ長期任務が入るだろうから、ナディヤを中央に呼んだとしても一人にさせちゃうし。…なにより、ナディヤが中央で他の男に目を付けられないわけがないからね。だったら村にいたほうが安全ってね」


「う…そっか…もし離れたくなかったら、ナディヤ姉さんが学舎からいなくなっちゃう可能性があるんだ…そ…それはイヤだなー…」


「問題ないぞ」


「え?」


「コンラートはナディヤに会いたいが、会えない任務に駆り出される可能性が高いんだよな?だから、会える任務にすればいい」


「…なんかイヤな予感がするんだけど、僕」


「俺を本格的に軍へ引き戻す工作を、あいつが担当すればいいんだ。もう手は打った。せいぜい焦らして、しばらくしたらコンラートが俺の説得を成功したことにして、俺は軍へ戻る。その間にあの二人がどうするのかを決めればいい」



…ヘルゲ兄さんが、軍へ戻る。

すぐではないけど、ここからいなくなる。

今度こそ、きっと戻ってこない…



「…ニコル、またこのことは話し合おう。ね?」


「うん…大丈夫だよアロイス兄さん。わかってたこと、だもんね」



アロイス兄さんに笑顔を向ける。大丈夫、わかってた。

ヘルゲ兄さんにも笑顔を向ける。少し…ううん、正直言ってものすごく寂しくて怖くて泣きたいけど、大丈夫。



きっと、何回かならミニロイでお話しくらいさせてもらえるよね。

うん、私は大丈夫。

私がやるべきことを、やるだけ。

きっと、大丈夫。






  

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