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60 ミニシリーズ sideアロイス



ニコルは元気だ。

びっくりするほど元気なんだけども、やっぱり僕やユッテたちは異変を感じている。悪い変わり方じゃないから、そんなに心配することはないよってユッテとアルマとオスカーには伝えたけど。


ヘルゲに言わせれば、これでも緩やかな変化なのだそうだ。

思春期ということもあり、多少自我がブレているのだろうということは僕にもわかるけど…まあ、要するに急激に大人っぽくなっているってことなんだと思う。


ヘルゲが『真の望み』と融合した時の話は聞いている。

それ以前の自我がどうだったのかは、全く覚えていないそうだ。

幼すぎたからなのか、融合がそれほど強烈に自我を書き換えてしまったのかがわからないので「参考にならんな、すまん」と謝られてしまった。

彼のせいではないのに。




ニコルは自分が少し変化しているのを自覚しているのか、なるべく以前のように振る舞おうとしているようだ。それでも時折、大人びた悲しい笑顔をしたり、何かを静かに考えたりする様子を見せる。


学舎ではそんな様子も少ないように感じるけど、森で話している時や、宿舎の部屋でそんな感じになるらしい。



「兄さんたちも私が変わったって思う?私、あれ以来ビットにお願いしたりしてないんだけどな…」


「んー、お願いするのが悪いわけじゃないと思うよ?引きずられて深く潜らないように気を付ければいいと思うし。それに、思春期の女の子が変わっていくのって、当然だよ?」


「心配しすぎるのもよくないだろう。それに、ニコルは素直なままだ。芯は変わっていない、問題ないぞ」




えへへ、とニコルが笑う。

ヘルゲも笑いながら、ニコルの頭を撫でる。



この幸せの光景が続くのも、そんなに長いことではなくなってきている。コンラートが参入したことで、中枢や軍がどんな空気で、どこに的を絞って狙っていけばいいのかがわかってきた。以前まではあと二年は必要だろうと言っていたヘルゲが、あと半年から一年あれば仕掛けは済みそうだと言い出している。


さらに、フィーネの協力が得られそうだというのが意外だった。

もちろん僕らの事情を話すに至ってはいないけど。

コンラートがフィーネに「こういうことを方陣でできるもんかね?」と軽く話を振ったところ、深い蒼の瞳をギラギラ輝かせながら「面白い、やらせてくれ」と懇願してきたそうだ。




あとは、ニコルと僕、だな。


ニコルが憂い顔を見せるのは、ヘルゲのことを考えている時。

ヘルゲの孤独を感じ、ヘルゲの悲しみを感じ、ヘルゲの壊れた心を感じる。

ヘルゲの代わりに寂しがり、ヘルゲの代わりに悲しみ、ヘルゲの代わりに痛みを感じている。


ほんとうに、大人になったねニコル。




僕はニコルが品質検査に合格しないことや、それでニコルが被るであろう「低品質」の誹りをカバーしていかなければならない。



ニコルが、彼女の願い通りに成長できるように。


”母の轍”に染まりきった世界から、彼女を守る。



責任重大なのはわかってますよ。

教導師アロイスの本領発揮はこれからってね。






あ、そうそう。

コンラートもずっと村にはいられないからね。

ヘルゲと相談して、僕ら用の通信機を作ったんだ。


まあ、これが「聞いてもわからない、理解できたらできたで意識がトんじまう」とコンラートが言うようなシロモノなんだけどもね。


大きさは子供の握りこぶしくらいの魔石。

でも魔石を持ち歩いて話してたら、当然目立つわけで。

せめて偽装して部屋に置いておくべきだ。

人の目に付くのは絶対マズい。



ヘルゲもコンラートも「あ?ポケットにでも突っ込んどけばいいんじゃね?」とか「どうでもいい」としか言わないので、僕は変なところで危機管理意識の薄い軍人どもにお仕置きすることにした。



ニコルに「彼らはどんなイメージかな?」とアンケート調査。

結果、迂闊に持ち歩くにはキツい通信機ができあがった。



ヘルゲは小さい黒くま「ミニヘル」。

僕は小さい金くま「ミニロイ」。

コンラートは茶色の小さな狐「ミニコン」。


そしてこれは内緒で用意したんだけど、「遠距離恋愛専用通信機」もある。

ナディヤ用の小さな黒猫「ミニディア」だ。



4つの魔石をぬいぐるみに仕込んで、完成。




男どもは阿鼻叫喚って感じの抗議があがったけど、知らないよ。

危機管理意識が薄いのが悪いんだよ?


ヘルゲはニコルが選んでくれたんだよ、と言うと大人しくなった。

コンラートは「ミニディア」を見せてやったら大人しくなった。

ニコルが私も欲しいと地団太踏んでいたが、生徒はこんなもの持ってちゃいけませんと先生モードで叱って大人しくさせた。




…君たち、もう少し落ち着こうか?







  

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