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59 プライド・スイッチ sideコンラート



俺がヘルゲとアロイスの「潜入捜査」に入って、もう一か月経った。

だいたい村の動向やパワーバランスも知れたし、ヘルゲとアロイスからの膨大な情報で、マザーが俺たち白縹をどう・・したいのかも少しは理解した。


俺の頭が悪ィとか言うなよ?

ヘルゲの野郎が書き込んでくる情報量がオカシイんだからよ。


しかしまあ…普通はさ、あの情報量はどうやったって書き込めやしねえんだよ。なのになんでヘルゲはいとも簡単にやってんだと聞いたんだがよ。



「…心に”裏”の領域があると認識させて、そこに鏡文字で書き込む。必要だと感じた情報や方陣の情報は、その都度”裏”から”表”へ反転しながら浮き上がって来るから、本人への負担が少ない」



ほうほう。ふんふん。

…裏ってドーコーだーよ!!!!

俺の心のはずなのに、どこ探したって見つかりゃしねぇ。

アロイスは焦点のあってない目で薄ら笑いを浮かべながら、


「変態魔法使いに何言ってもムダだよ、コンラート」


としか言わない。


…まあいっか。こいつらとツルむようになってから、なぜか一気に心の領域が拡がった。なんだか楽しくて仕方ねぇとかいうことはぜってー言わねー。言わねぇったら言わねぇ。ナディヤには一発でバレたけどよ。



ああ、そういやフィーネはもう中央へ帰った。

滞在中の三日間、そりゃもうヘルゲにご執心だった。

…正確にはヘルゲのマナと方陣に、だな。


バールに昼メシ食いに行くと、元気に現れる。

ヘルゲが逃げようとするので、「森まで追跡されたくなきゃ耐えろ」と言ったらおとなしくなった。

そのうち根負けしたヘルゲは「フィーネも魔法部関連の連絡事項があるから」という理由で家にあがらせた。

フィーネはオモチャを与えておけばおとなしいと気づいたからだ。



俺は情報収集のために、オステリアへ行くこともある。

バールで聞ける情報ってのは、男からのものになりがちなんでな。

すると、まあね、ビルギットと接触せざるを得ないわけなんだけど。そこは”俺シュヴァルツ。シュヴァルツのホコリ発動”とか思って耐えるわけだよ。



「ねえ、フィーネがアロイスの家に行ってるじゃない?あの頭の固い子が何の用なのかしらあ。言ってることがよくわかんないのに、会話にならないんじゃなぁい?」



キタキタキタ。

魔法部の連絡アリ、軍部の連絡アリ。そういうことなんですよと流す!



「へぇ…連絡ねぇ…酒場からなんて、何の連絡もないわぁ」


「まあよ、ヘルゲも仕事で嫌々なんだよ。俺らも中央からついでの使いっ走りみたいに使われてるんだ、そんなに言ってくれるなよ~」


「…それもそうねぇ。あ、そうだわ、これ知ってる?」



口の軽いビルギット様から噂話がポンポン入る。


酒場を出入り禁止になった境界警備隊が例の三人に天誅をかまして、三人はそのまま出入り禁止だが警備隊はソッコーで酒場に復帰した。売上がそんなに落ち込まなくてよかった、とか。


女性も安心して外食できるように、村の中の夜間警らを境界警備隊が受け持つことになった、とか。


学舎で恋のおまじないが流行ってて、自分もやってるけどまったく効果がない、とか。




オステリアを出て、少し冷たくなってきた風に吹かれてみる。

噂話でパンパンの脳を冷やすのにちょうどいいってもんだ。

家まで歩きながら、今の情報を整理…



…ビルギット、まだジンクスだのおまじないだの信じるんだな…



…アロイスが維持セクトへの抗議はまかせろって言うから頼んだけど、抗議の範疇超えてたな…



ハァ、とため息をつく。

よし、気持ちを切り替えっかァ。

”俺、ヴァイス。あいつらのツレ。ナディヤの紳士。白縹の誇り発動~!”


ナディヤは学舎の職員宿舎住まいだ。自室にキッチンはないが、最近食堂のおばちゃんに料理の手ほどきをしてもらってるとかなんとか。

だから、まだ手料理食わせてもらったことはないんだけどよ。

「ごめんなさい、まだちょっと自信がないわ…」とか謝ってくるわけ。



そーゆーモンダイじゃないっつーの。

可愛いすぎだっつーの。

アロイスが料理上手なのなんて、毒研究の副作用なんだぞアレ。

俺に食わせるためとか…っ



おお、いけねぇ…”紳士”の部分が吹っ飛ぶとこだった。

修練、修練。心頭滅却。




「…コンラート。ニヤけてて気持ち悪いぞ。修復しろ」


「俺も修行が足らねぇな…お前を気持ち悪がらせるなんて快挙かよ」


「おう、アロイス以来だな」


『オホメニアズカリ コウエイデス』


「やめろ…」



フィーネのことを思い出したのか、ヘルゲが苦虫百匹の顔になる。

へ、勝ったぜ。







  

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