441 紫紺歴1729-1730
紫紺歴1729年より以降は、主にチーム緑青の「長」ラッシュでしたね。
この年、ロッホスが混成魔法研究室長に就任。彼の実績と言ったら数え上げればキリがありません。ヘルゲさんの山津波を研究しているうちに土魔法と火魔法のミックス「アースクエイク」を発案。これは急激な温度差を地中で起こすことにより極地的な地震を起こします。
他にも
・風魔法と土魔法のミックス「塵旋風」
・風魔法と火魔法のミックス「火災旋風」
・水魔法と火魔法のミックス「地獄釜」
などなど…
ちなみに「風+土」の表記だと風がメインで土が補助という感じの配合になります。どれもこれもヘルゲさんに「こんなのどうだろ」と言っただけで実現されてしまい、ロッホスはその業績を魔法部で褒め称えられるたびに「マジで穴に入って自分を埋めたいほどハズかしい」と赤面して身悶えしています。
ですが彼は精霊魔法の研究もかなり深くまでやってくれましてね。ニコルさんの精神性、マナを友人として錬成するという感覚をグローブで自ら体感し、とうとうグローブなしで微弱ながらも精霊を自分で出せるまでになってしまいました。
その後調子を崩してマナはしかに罹り「この年でマナはしか~!?」とアルに爆笑されてケンカになったとか。
ともあれ「精霊」とは、いわゆるアルが体感している「意志を持つマナ」にかなり近い存在を自力で作り上げる作業だというのが分かり、端的に言えばニコルさんは「自作のマギ言語を直に操っていた」ことになるんだそうです。
そりゃあ収束なんてしたら「意志を持つマナ」を圧壊しちゃうようなイメージですよね…ニコルさんが苦手なわけです。
ちなみにニコルさんのお腹にいた頃から植物を育成してしまっていたアオイなんですけどね。彼女は植物だけではなく動物にも影響を与える精霊魔法使いであることがわかりました。アオイの精霊は動植物との親和性が異様に高く、事象の直接変換による攻撃魔法も撃てますが、どちらかと言うと生産系能力だろうという話です。
逸話としては…アオイがブナの森で遊んでいたら数十匹の猫が集まってきて、アオイの周囲で「猫だんご」になって寝ていたり。リーのいる北方砦へ連れていってもらってレインディアの方角を見ていたらトナカイの群れがドドーっと砦へ殺到し、立派なツノのついた頭をブンブンとヘッドバンキングさせてまで挨拶されたりと色々です。
可哀相だったのは「軍のトナカイを世話してたらしいレインディア兵が巻き込まれて連れて来られてた」とフリッツやリーが爆笑してた件ですかね。その兵士数人は北方砦に攻撃しようと思ってたわけでもないのに数十キロ離れた駐屯地から突然の大暴走に巻き込まれて敵前に連れて来られたわけで。
「あんまりにも憔悴して死を覚悟してたからよー、思わず普通に『お疲れ』って労って帰しちまったよ」とフリッツも呆れてました。
さて、その翌年にはパウラがユニーク魔法研究室長に就任です。
この頃猫の庭の子供たちはちょうど15歳から19歳という年齢だったわけですが、この子たちの中で自然の体現者以外のほぼ全員が当然のようにユニーク持ちだったんです。
あ、レビだけ例外ですね。彼は両親を超えるド級のマナ同調者でしたから、ユニーク認定じゃないんです。ともかく彼女の研究熱もさることながら、グラオでは子供たちの特殊な能力を把握するのは必要不可欠でしたので非常に助かりました。
そしてパウラによって判明した子供たちの特性は、全てパウラによって発見された功績となったわけです。パウラも当然ロッホスのように「穴をレジエ山脈の熱水鉱脈まで掘って埋まってし(以下略)」と羞恥でジタバタしていました。
気にすることないじゃないですかねえ?子供たちはパウラのおかげで安全かつ健やかにユニークを受け入れられたんですから。
まあ、パウラが発見した(ことになっている)能力は、功績としては大々的に讃えられましたが、内容は当然秘匿ランク8オーバーです。特にルカのラック・チェインだけは何としても秘密にしないといけませんから。
で、子供たちの能力は以下の通りです。
ル カ:「ラック・チェイン」占術系ユニーク、「インビジブル」レア・ユニーク
レティ: 黄玉 土特化
ライノ:「カウンシル」心理系ユニーク
レイノ:「シンパシー」心理系ユニーク
ニーナ:「キュア」医療系ユニーク
ノーラ:「ヴェノム」病理系ユニーク
スザク: 紅玉
クレア:「思考増殖」演算系ユニーク
アオイ: 緑玉
ウゲツ: 蒼玉 「シャドウ」レア・ユニーク
レ ビ: ユニーク認定なし マナ同調者( S級 )
…パウラがね、これをまとめてアロイスさんたちに報告した時、しばらく呆然としてましたよ。思わず私の仲間が一気に増えると思ったくらいには、皆さん魂抜けかかってましたね。
だってルカとウゲツなんてどんだけ特殊なんだって話ですよ。特にルカは私の叔父と同じ名のレア・ユニークを発現したので、本当に心配しました。叔父はとても苦労してましたから。
パウラによるとラック・チェインはかなり無意識に使用する傾向が高く、インビジブルは個人資質で制御するので負荷が分散されるそうです。ウゲツも蒼玉としての攻撃魔法威力が高いのは肉体的特徴ゆえだし、シャドウは個人資質。
…これだけ特殊すぎる子供が集まったのは、やはり宝玉の影響だと思います。そして両親の特徴がきれいに半分ずつ出ているような容姿も白縹独特なのではとパウラが言っていました。主に髪と瞳、それと能力ですね。
「つくづく、猫の庭を作っておいて良かった」とアロイスさんたちが言っていた気持ちがよくわかりますよ。
おや、もうこんな時間ですか。
チーム緑青は功績が膨大になりがちなので説明が長くなってしまいます、すみません。続きはまた明日にしましょうね、おやすみなさい。