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Three Gem - 結晶の景色 -  作者: 赤月はる
終章 天使の独白
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439 紫紺歴1714-1721

  






あれから、どれほどの時間が経ったでしょう。


私はずっと、ずっと、猫の庭の皆と遊んでいます。


ギィたちとも、遊んでいます。


子供たちもすっかり大きくなったし、ギィたちも立派な青年です。





*****





ほら、私ってば「皆の死を見送るの、怖いなあ」なんて考えてたじゃないですか?ですので、なんとなく…怖いと思う心を猫の庭の建物に避難させてたりしたんです。その心がレコーダーのような役割を担って、こうして思い出を懐かしむのにちょうどいいことになっているわけでして。


あれから、本当にたくさんのことがありましたよ?


翌年にはアロイスさんたちの第二子ウゲツと、ヘルゲさんたちの第二子アオイ、アルたちの一人息子レビが生まれました。


ご存知かとは思いますが、ウゲツとアオイという名は月白の墳墓にいたスイゲツさんの弟と妹のものです。ガードと一緒に旅をした仲間でもあり、【葵】さんは【朱雀】の恋人でもあった人ですね。


あ、ガードに叱られました。正確にはお互い想い合っていたのに告白できなかったヘタレ…ごめんなさいごめんなさい、ランスの切っ先でつつかないでください、ガード。


レビというのは古語で「団結する、繋がる」という意味なのだそうで、アルが第一研究所の古文書で見た言葉なのだそうです。


三人とも可愛らしい容姿で、ウゲツは赤毛に空色の瞳。アオイは黒髪に緑の瞳。レビはミルクティー色の髪に青緑の瞳。



アオイは兄のスザクと同じく自然の体現者ですが、ヘルゲさんやニコルさんとも違う瞳の特徴があります。二人とも白斑があるのはもちろんなんですが、紅一色でも、緑一色でもないようなんです。彼らの心へニコルさんやヘルゲさんが遊びに行くと、無色透明な結晶もあるのが確認できているのだそうで…


ガードに聞いても「シラネ」と言われるんだとか。ヘルゲさんは怒りでプルプルしつつ「深淵の意志なら情報を探してこいよ」と言い、ブンむくれながら探しに行ったガードが「知ってるやつ、もういなかったぜー」と訳のわからない返答をしたので大ゲンカ。


その度にガードに愚痴をこぼされる私はたまったものじゃありません。ヘルゲさんに似て面倒くさがりのガードから根気強く事情を聞いてみると「俺の時代には数が少なくなっていた白縹にそんな瞳の者はいなかった。じゃあ月白なら知ってるかと思って探したが、月白が見当たらないからわからなかった」だそうです。


まあ、水月さんあたりはグラオの子供の誰かに守護として付いている可能性が高いですもんねえ。時間が経てばお話できるかもしれませんよと、ヘルゲさんには伝えましたけれども。




ウゲツも自然の体現者です。こちらは無色透明の結晶はなかったそうで、普通の…かどうかはこの環境下ではわかりませんが、レティシアと同じく宝玉です。どうもねえ…ヘルゲさんの感触ではウゲツに水月さんが守護としてついている可能性が高いと思われるんだそうです。ヘルゲさんとガードに共通点があるように、なんとなく水月さんに雰囲気の似た心だった、と言っていました。



そしてレビなんですが、彼はまあ両親にどこもかしこも似ていましてね、フィーネさん似の可愛らしい顔立ちなのですが、性格がアルそっくり。マナを見つめてポケーっとするのも二人にそっくり。


彼は自然の体現者ではありませんが、弱冠二歳で水魔法のマギ言語らしきマナをじっくり見たあげくに部屋を水浸しにした逸話持ちです。






まあ、彼らのその後は別にお話するとしてですね。

更に翌年、とうとうヴァイスに激震が走りました。


大佐と中佐の引退です。


それに伴ってアロイスさんが予てから決まっていた通り、ヴァイスの統括責任者となりました。この期に及んでは根回しも完璧、実績も完璧だったアロイスさんの就任に、ヴァイス内では特に問題もなく引継ぎが完了したわけですが。


じゃあ何が激震だったのかと言いますと、アロイスさんが笑顔で「僕一人では心元ないので、役職増やしますね」と言ってグラオの人員をガンガン就任させちゃったんです。


アロイス ヴァイス統括長

ヘルゲ ヴァイス統括副長

コンラート 渉外長(表向き蘇芳との折衝役ですが、黒との窓口ですね)

カイ 格闘術指南役

カミル 武術指南役

オスカー 新兵指南役(ほぼお世話係です。お疲れ様です…)


女性陣はそれぞれの妻ということもあり、暗黙の了解で「補佐役」的な扱いでした。例外はフィーネさんなのですが…彼女は魔法部と兼任でもあるのでこの役職フィーバーには加わっていません。ですが、まあ、ヘルゲさんと一緒に開発したものの多さで自然に仲間認定ですよね。


ちなみにフィーネさんはこの五年後に魔法部方陣研究室長に就任してしまいました。白縹一族としては初、軍部との兼任室長も初、初物尽くしの就任で、でも数々の実績に裏打ちされた満場一致の人選だったのだとか。



ああ、話が逸れてしまいました。

ええと、要するに何が激震だってことですね。


そりゃもちろん、カイさんとカミルさんの指南役就任です。


今までは師範の免状持ちなので「機会があれば教える」という感じだったのが、下は新兵から上はベテランまで、ほぼ全員が彼らの餌食…げふんげふん、生徒になったわけです。もちろん毎日ではありませんが、それでもヴァイスの専属治癒師が半泣きになるほどたくさんの人がボコボコにされました。


これを見越してアロイスさんはオスカーさんを新兵指南役としてワンクッション置かせたわけですが、この頃にはオスカーさんもトンデモ体術持ちだったものですからね。新兵の嘆きは察するに余りあります。



まあ、こういう経緯でグラオのメンバーは表向き「役員会」と称してヴァイス内でも堂々と活動できるようになりました。まあ未だに猫の庭の方が秘匿性の高い情報をやりとりできるので、そっちにいることが多いですけど。



ですがヴァイス統括長になったアロイスさんが執務室にいないのは、ミッションでもない時以外はマズいですよね。なので開発セクトの総力を挙げて作り上げたのが「影アロイス」です。


私の器とそっくりの構造ですが、統括長の執務室へ用事のある人が心理探査にひっかかるとアラートがあがります。即座にアロイスさんはハイデマリーさんに接続し、影アロ(みんな略してこう呼ぶようになってしまいました)へリンクする。するとハイデマリーさんのシャドウが自動発動して、アロイスさんの思考通りの会話をするわけです。


なのでアロイスさんは猫の庭にいて、みんなと秘密休暇で寛いでいても大丈夫。もちろん本当に本人じゃないとマズい時もあるので、その時は別室で入れ替わったりしますけどね。




こんな風に、ヴァイスの世代交代は行われていきます。大佐と中佐は猫の庭と中央の自宅を行ったり来たりして楽しくご隠居ライフを満喫していますし、もちろんヴァイスには相談役としてたまに顔を出すのでみんな安心してアロイスさんの元で活動しています。


これが、紫紺歴1714年から1716年までの出来事です。

あ、フィーネさんの室長就任も入れると1721年までですかね。


その後の大きな出来事は次回お話しましょうか。


では、おやすみなさい。







  

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