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44 俺と女の子たち sideコンラート




村に帰省してから約一週間。

ヘドロ隊長への定期報告も、オレ流の”シュヴァルツの誇り”に従ってキチンと済ませた。


まあ、それにしてもヘルゲ自慢の侵入用一号・二号端末の威力はスゲェ。


俺が気になっていた「バジナとホデクの真意」を、いともたやすく看破してくれた。


なんつってもあの二人は根っからのタヌキだ。しかも片方は裏事情のエキスパートだもんな。俺に言った「甘えた紅玉をなんとかしたい」なんて、部下を丸め込むための方便に決まってるしな。


ところがねー、そんな風に思ってたんだけど、意外に俺様の芝居が効いてたらしく。バジナ大隊長は緑青の才媛・デボラ教授と犬猿の仲で、本当に紅玉を取られていることに腹をたてているようだ。そしてホデク隊長は今回の帰省を勧めたときに「白縹の名折れ」とまで言い放った俺を、今回の件に関しては完全に信用したらしい。


…おーい…裏方のトップともあろう人が、そんなに甘ちゃんでいいのかよ?


まあ、ダマされてくれてんなら、それに越したことはない。

つーか、この情報のウラを取るやり方ってばシュヴァルツも真っ青の情報戦だった。マザーに一時保管されている個人の記憶をかっさらってきてんだもんよ。

完全にヘルゲ一人に負けてんなー。




まあ、そんなワケでね。

一番の懸念材料だった「オシゴト」もなんとかなりそうだし。

今日は学舎でキレイどころとランチでーす。うぇーい。


オステリアに寄って、三人分の料理をテイクアウト。

そこのウェイトレスにビルギットを発見した。

わーお、似合いすぎててなんか引く…



「あらぁ、コンラートじゃない。帰ってきてるって聞いてたけど、ここに来なかったわね?食事どうしてたの?」



あー、村の男どもは三食全部食堂か酒場で済ますやつが多いからな。



「ああ、アロイスんとこでちょっとね」


「ええ?じゃあ、あの噂ほんとだったのね…『難攻不落の家』にいるって、ほんと?」


「あ?ああ、そういやそんなこと言われてるみたいだな」


「へぇ~…珍しい…」


「そうかぁ?まあ、軍の用事もあってな!ちょいと間借りしてるってことさ。そうじゃなきゃ、あいつらが家に入れるわけねえだろ?」


「ああ、そういうこと。まあ、それなら、ねえ」


「おう、そういうコト!んじゃ俺、行くとこあるからさ。ゆっくり話せなくて悪ィな。またなー」




…うっほー、あいつ口軽いからなァ。懐に入ることができました、なんて思われたら女の子の『津波第二波』が俺めがけて来るんだろ?ええ、わかってますとも。俺はアロイスみたいな苦労を背負込む気はないぜ…門番ダメ、絶対。


つーかビルギットもまだヘルゲ諦めてねーのかな??

あの魔王っぷり見て、普通なら恐れ慄くと思うんだがなー。

ま、酒場のウェイトレスつーたらお色気担当女子の花形職業って位置づけだ。

お似合いですよー、ビルギットはん…






学舎について、アロイスのとこへ行く。

一応ね、不審者じゃないよーっつう届出するから、職員に言っておかないとね。

ついでにランチwith美女の自慢しとかないと。

いいじゃないですか、最近まで枯れた長期任務でムサい男の相棒しかいなかったんですよ…



「ん?今日出かけるって言ってたのって、学舎ここだったのか?」


「そゆこと~。ナディヤとリアにランチ付き合ってもらう約束してたんよ」


「おお、そりゃゴージャスなランチだね。どうりで浮かれてたわけだよ」


「軍にはない癒しだ、目の保養に行ってくるぜ!」


「あはは、いってらっしゃい。届は出しておくから。職員用の食堂わかるだろ?」


「おー、わかるよ。ありがとなー」




職員用の食堂へ着くと、窓際の席でナディヤが手招きしてくれた。



「おー、席とっててくれたのか。これオステリアで買ってきたんだけど、食うか?」


「あら!ありがとうコンラート。ごちそうになっちゃっていいの?」


「もちろんかまわねーよ。中央の土産がなくて悪いな」


「ふふ、そんなこと気にしなくていいのに。あ、リアも来たわね。こっちよ!」



…ふおー、清涼な空気が流れてますよ、ここ。



「コンラート!この前会えなくて残念だったわ。来てくれてありがとう」


「おう、リア!久しぶりだなあ。学科の教師だって?」


「ええ、なんとかやってる。優秀な子も多いから、気が抜けないけど」


「でもリアの授業はわかりやすいって、この前担当の子が言ってたわ。がんばってると思うわよ?」


「そ…そう?だったら嬉しいな…」



…ふおー、かぐわしい空気が流れてますよ、ここ。



さーて、料理が冷める。食っちまおう。


…つかさあ。

職員の食堂なのにさあ。

ビシビシ伝わってくるこの視線はナニ。

軍属なめんなよ~?敵意や視線には敏感ですよ~?



「コンラートはアロイスの家に滞在してるんですって?」


「おう、世話になってるよ。軍の連絡もあってな、半ば強引に入り込んださ」


「あら、そうなの?アロイスはずいぶん嬉しそうに、コンラートがうちにいて楽しいって言ってたけれど」



ぬおっ不意打ちか。

だが俺の鉄壁フェイスは崩れな~い。



「アロイスはな。ヘルゲはそうもいかねーよ」


「まあ、そう?お仕事の連絡もあるんじゃ、そうそう打ち解けないのかしらね?」


「この前、ニコルが泊まりに行ったでしょう?ずいぶん嬉しそうに『ヘルゲ兄さんとコンラート兄さんはほんとにすっげー仲良かった』って、言ってたわよ?」


「あー、ケンカするほど仲がいいとか、そんな感じに見えるんじゃねぇの?あいつ軍属になってからまあまあしゃべるしな。普通だよ、普通」


「…ふふ、そっか…よかったわね、コンラート」


「え、何で『よかった』になるのかわかんねーよナディヤ」


「だってすごく楽しそうよ、あなたも」


「そうかァ?まいったな、ナディヤはすぐ見透かすんだからよ…」



鉄壁フェイス、崩れた…



「あー、まあホラ。軍じゃそんなに気の抜けたこともできねえしよ。村にいると俺もリラックスしちまうんだよ」



そう言うと、リアが心配そうに俺を見る。



「そういえば、フィーネに聞いたわ。コンラートは長期任務が多いから、滅多に会えないって。忙しすぎるんじゃないの?大丈夫?」



ふおー、清涼な空気再び…

そして視線ビシバシ…



「ああ、この前デカい任務が終わったんだよ。二か月くらいはこっちで骨休めさせてもらえることになってな。せいぜい英気を養うよ」


「そうだったの。なら安心かしらね。あぁ、楽しいと時間が過ぎるのが早い…私、午後の授業の用意しなきゃいけないの。ごめんねコンラート、ごちそうさま!」


「おう、がんばれよ先生。なんかあったらアロイスに伝言してくれ。すぐ来るからよ」



いい笑顔を残して、リアが食堂を出て行った。

その隙に視線の先を辿る。ひい、ふう、みー…おー、リア狙いが4人ね。

顔を戻すと、ナディヤがじーっと俺の目を見て…観察してる??



「…なんスか、ナディヤさん?」


「うーん…この前あった時より、瞳の色が濃いと思って…やっぱりコンラート、あなたとても充実しているのね」


「うっはァ、ナディヤにはホントかなわねーな…まあ、あんまし言ってくれるな。俺も多少浮かれてる自覚はあるよ」


「ふふ、そうね。きっと言わない方がいいわね。でも私がわかってるって知っててもらえればいいと思うわ。きっとあなたが来たことが、アロイスもヘルゲも…そうね、ニコルも嬉しいはずよ」


「なあ、ナディヤってレア・ユニークなんじゃねーの?すげえな、なんか」


「違うわよ、そんな判定出てないわ。ただ、わかる人はわかっちゃうっていうだけ」


「それがスゴいんだって…」



紫の瞳に見透かされすぎて、どうにも座りが悪くなってくる。

それでもイヤな気分にまったくならないんだから、俺も大概ナディヤに弱い。



「あ、そうだ。この食堂だけでリア狙いが4人にお前狙いが5人いるぜ。よりどりみどりみたいだけどよ、慎重に選べよ?」



声を落としてとりあえず注意喚起してみる。



「ええ、大丈夫よ。リアもあれで人を見る目があるの。私も、ちゃーんとわかってます。隙も見せる気はないし、きちんと選ぶつもりよ?」


「ぶはは!余計な心配だったな。んじゃそろそろ仕事だろ?メシ付き合ってくれてあんがとな」


「ううん、とっても楽しかったわ、ごちそうさま。こちらにいるうちに、また食事しましょうね」


「おー、頼むわ。んじゃな」



食堂を出て、足取りも軽く歩く。

は~、やっぱ、しっとり美女はイイ。

軍にはタヌキとかキツネとかヘドロしかいねェ。



「コン兄、浮かれてる…」


「うん、うきうきな感じねぇ~」


「ほんとだー。すっごく楽しそう!」



おおう…三人娘に目撃された…お前ら午後の授業始まるぜ…?



「授業に遅れんぞ、がっつり勉強しろー」


「コン兄、ごまかしてるね…」


「んー、ちょっと照れ隠ししてる感じねぇ~」


「そうだねー、ちょっと顔赤いねー」



くっそ…撤退!ここは勇気ある撤退のみだ!

俺は足早に学舎を離れた…






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