表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Three Gem - 結晶の景色 -  作者: 赤月はる
虹の輪舞曲
425/443

424 ケイオス② sideヨアキム








ケイオスというデミ最大マフィアのボス。その来歴はオープンなようでいて、肝心な部分は隠されているようです。今回紅たちは、ケイオスに関して私が「知りたいな」と思ったことを最優先で調査するように指示されています。


紅は私と接続していますので、私の思考に沿った調査指示を藍と翡翠に出して行きます。もちろん、分体への侵入もフリーパスですよ。私の思考による指示扱いですから、許可は自動的にされています。


藍が侵入したのは蘇芳の分体です。軍部でデミ専門部署からの情報収集を任せ、このボスが「ルチアーノ・露草」という、露草出身の調停能力者バランサーであることまではわかりました。


ここまでの組織を作るのですからね、随分と強力なバランサーなのでしょう。ということは大したことをカマさなくても、この人が勝手に落とし所を見極めてくれそうな気もしますね。


彼がどうやってこの組織を大きくしたかは面倒なので割愛でいいですよ、と紅へ伝えます。弱点になりうるものだけ探してくださいね。


翡翠は露草の分体へ行っています。ですがルチアーノに関しての情報は削除の形跡があるようでしてね。まったく、分体とは言えマザーの情報改竄なんてよくやったもんです。ああ、魔法部にはうまく迂回ルートを使ってルチアーノの情報をバグ扱いにさせたんですね。上手にやりましたねえ。





ふむ。

彼の来歴からの絡め取りは面倒だし、パスしましょう。

デミの作法に従って、力で捻じ伏せるのが良さそうです。




ボス「なあ、ユニオンに入る気はないか?悪いようにはしない」


ヨア「今すでに悪いようにされてますよ。何がユニオンですか、面倒くさい。あなたほどの調停能力者が、引き際も見極められないんですか?」


ボス「…楽しいな…お前、面白い。是が非でも俺のものにする」


ヨア「気持ち悪いですねえ。調停能力者が我欲にまみれるとこうなるんですか。で、どうやって私をあなたの所有物にするんです?」



フィーネさんとアルに同時接続すると、控えの間に魔法使いが二人いるのが視えました。マナを読んでみますと、彼らの計画が筒抜けになります。


私の周囲へ結界を出した瞬間に?麻酔効果のあるガスを結界内に充填?

ほうほう、意識を失った私を部屋へ監禁し、精神的に屈服させるご予定、と。




…芸がないなー!!


ルチアーノのおっさん、それはつまらないです!そんなのもう七百年前に経験済み!もっとこう、「おっさんやるね!」みたいなのが欲しいです。カミルさんのスペクタクル・ショーを見損ねたから、すっごい期待しちゃったじゃないですかあ~!


私の周囲が結界に覆われます。途端にブシュッと音をさせて、笑気ガスが充満しました。私は普通の笑顔のまま深呼吸して、アクビして、ノビをして、足を組み直しました。


笑気ガスにまみれたまま、ルチアーノへ問いかけます。



ヨア「…で?」



ルチアーノは目元をピクリと動かしましたが、ほとんど動揺を見せませんね。



ボス「…お前、人間か?つーかどうやって防いでるんだ」


ヨア「失礼ですねえ、人間ですってば。ほらほら、頑張って!私を屈服させるんでしょ?ミラクルでイリュージョンでスペクタクルな感じでお願いしますよ!おっさん、ファイト!」



ルチアーノはため息をつくと、また手を一振りしました。結界も笑気ガスも解除され、次は何かな!と思ってワクワクしましたが、もう控えの間には誰も来ません。



ヨア「えー…もう終わりですか。なーんだ」


ボス「お前、セルゲイの腕を切り落とされたら嬉しいか」


ヨア「あー、人質作戦ですかあ。セルゲイさんの腕が切り落とされたら、この刺青が中途半端になっちゃいますね…それはイヤだなあ」


ボス「なら、俺のものになれよ」


ヨア「おっさん…甘いですよ。本気で私を従わせたいなら、人質は恋人か近親者でしょうが~。あ、それが判明しないから打つ手に乏しくて内心困ってたんですね。ほら、この刺青だって魔法効果があるっていうから研究材料用に彫ってもらってただけなんで。最悪セルゲイさんが腕を切られちゃったら諦めますよ」


ボス「…ハァ…なかなか面倒なやつだ。だが、オトし甲斐があるな。長期戦でいくか…」



ルチアーノは私に張り付いて、従わせる弱点をのんびり探す気のようですね。そんなことさせるわけ、ないでしょ?



ヨア「ルチアーノ。私に関るなって、言ったでしょう?付き纏って従わせる材料を見つけるつもりでしょうが…お前如きに、私を下せるとは、思わない方がいい」



この部屋の中にいる護衛四人に、とっても軽い狂幻覚を掛けます。ちょっとの間、気持ち悪い巨大生物に咀嚼されている夢を見ていてください。


そして私は、魔法制御力にモノを言わせて、この部屋全体を歪めました。


純白の艶やかな石材の壁には一瞬で静脈や筋が浮き上がり、生き物の体内のように蠢き始めます。ルチアーノの座っている赤い皮張りのソファがモコリと盛り上がり、彼をぬめった内臓のような赤でぎちぎちに締め上げました。


そして白い生き物と化した壁から触手が生まれ、床や天井にドスッと刺さってはズルリと人間を掴んで引き摺り出していきます。



ヨア「…最愛の妻ベアトリーチェ、息子のカルロ、その嫁アニータ、そして…目に入れても痛くない孫、ビアンカとヴァンニ。愛人さんも数人いますね。でもボスの情婦イロなら体を張りそうだから、人質にはならないですかね」


ボス「…幻覚だろうが」


ヨア「幻覚ではありませんけど。触ってみます?」



ルチアーノのソファを元に戻して解放すると、彼は二人の孫の幻影へ近づいていきます。ちなみに今私が接続しているのはハイデマリーさんとフィーネさんです。この壁とかソファの内臓アートは私の力作ですよ。すごいでしょ~。


グッタリした孫二人に触り、一応温かいから生きていると思ったルチアーノは幻影を全員見渡しました。そして、さっきとは違うソファへ座りました。


…そっちのソファも内臓にできますけど?やってあげましょうか?


拘束まではしなくてもいいですかね、と思ってルチアーノの座ったソファをドクン!と鼓動させてから内臓アートを施して差し上げました。それを見てルチアーノはため息をついて、両手をすっと上げました。



ボス「…わかった。参ったよ。お前を飲み下すには、俺は力不足だ…」


ヨア「あら、素直ですね。じゃあ皆さんお帰り願いましょう」



白い触手がずぶずぶと幻影たちを埋めて行き、壁もソファも何事もなかったかのように戻りました。


おっといけない。

護衛さんたち四人、謎の巨大生物に咀嚼させたまんまでしたっけ。


狂幻覚を解除すると、脂汗にまみれた屈強な四人は見る影もなく憔悴していました。あ、でも一人が「怒りの☆猪突猛進!」です。ダメですねー、そんなんじゃボスの護衛は務まらないでしょう。ボスのゴーサインもないのに攻撃ですか?


カイさんに接続して、合気柔術で抑えちゃいましょう。天地投げで背中から地面へ叩きつけます。さすがに受け身を取ったようなので、そのまま二教の抑えで手刀です。うん、沈みましたねー。



ヨア「ルチアーノ、躾がなってませんよ。私と交渉したいならお行儀よくさせなさい」


ボス「お前ら、もういい。控えで待ってろ。ヨアキムには力も魔法も効かん」



渋る護衛を手の一振りで追い払い、ルチアーノは私との「落とし所」を探す気になって向かい合いました。


はあ、ここへ持ってくるまでが長かった。


これだからマフィアは面倒くさくてイヤなんですよ!!







  

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ