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Three Gem - 結晶の景色 -  作者: 赤月はる
虹の輪舞曲
411/443

410 仲良しのティータイム sideアルノルト

  






今日はトビアスもこっちの研究室にいて、ラウラさんたちと一緒にマザーの点検をして研究室へ戻った。そしたら、お母さんとテオさんが枯草みたいになっていた。


みんなで「どしたの?」と聞いてみると、テオさんがアハアハと笑いながら「アルノルト…聞いてはいたけどほんとだったんだな…」と俺にメモを渡してきた。



【今週中ならいつでもいいから、二人で官邸へ遊びに来い ヒロ】



アル「あー…ごめんねテオさん、お母さん…通信、直接受けちゃったんだね。俺かトビアスがいたら通信受けられると思って、簡単に『直接連絡くれ』って言っちゃったから~…」


デボラ「…まあ、いいよ。なるべく早く行った方がいいんじゃないのか?」


トビ「俺、今日なら行けるぞ。明日はユニ研のレジュメ作成があるから無理だ」


アル「んじゃこれから行ってきてもいい?」


テオ「おう、もう点検も終わったんだろ?急ぎの方陣作成依頼書もないし、行ってこい」




俺とトビアスは官邸どころか中枢会議所も初めて。入る時に当然、マナ固有紋登録でチェックが入るんだけど、そのチェック画面を見て門衛さんがピクリと反応。そして「少々お待ちくださいませ」って恭しく言った。


俺たちみたいな若造に、随分丁寧に接してくれるもんだなあ…中枢会議所の門衛さんともなると、そういう礼儀の教育が行き渡ってるのかなあ、なんて感心していたら。


奥から、たぶん瑠璃の人(瑠璃一族で中枢会議所に詰めてる人は、大抵アスコットタイに瑠璃色のタイピンをしているってエルンストさんに聞いた)がすごい勢いで走ってきた。



瑠璃「お待たせいたしました。ご案内致しますので、こちらへどうぞ」


アル「え、あ、ありがとうございます…」



丁寧な物腰の人に付いて行くと、中枢会議所の区画ごとに瑠璃の人がバトンタッチしていく。まさか、あの人はこの区画まで、この人はこの区画担当とか…決まってるのかな。中枢会議所の大きな建物を抜けて回廊を歩き、北に聳える白亜の建物へ向かう。


うん、アレ、官邸…なんですね?すっげえ威圧感…


最後の道程を案内してくれた瑠璃の人は、扉を警護していた人に「お連れしました」と言って俺たちに会釈して去っていく。またしても俺たちは官邸の使用人さん?にバトンタッチで案内されて、中庭みたいなところに連れて来られた。



ヒロ「おう、早かったなあ」


ジグ「よう来た。座れ」


アル「こんちは~…すっげ、気持ちいいねここ」


トビ「ちゃっす。どした、じいちゃん。なんか方陣の機能つけたいのか」



やっぱりこの前温泉で会ったおじいちゃんそのままの二人にホッとしつつ、綺麗な絵画みたいに整えられた中庭の東屋でお茶をしているのが自然な二人に感心しちゃったよ。コレがハイソサエティー(棒読み)とか言うやつかねー。


ヒロおじいちゃんは側近の人に「この二人は構わん。分かっているなら控えろ」とビリっと来る声で言った。さらにジグおじいちゃんが「対応ランクSでもてなせ。…年齢で人を見るとは、お前らなっとらんぞ」と眉間のシワを深度マックスにして威嚇する。あのシワの力強さ、絶対何か挟めるよ。


つか対応ランクって、緑青の第一でも使ってたアレかな。すげー、俺たち賓客待遇かよ~!?何やってくれちゃってんの、おじいちゃん!



アル「もー、ジグおじいちゃんシワの深度すごいってぇ!怒りんぼはよくないよ?んで、どうしたの?何かあの方陣で困ったことがあった?何でも改造するよ?」


ジグ「お前、質問攻めじゃな。ヒロから話を聞け」


ヒロ「んあ?お前らと遊びたかっただけだ」


トビ「嘘つけよ、ヒロじいちゃん…そのツラ、俺らと遊ぶんじゃなくて、俺らで遊ぶって言ってんぞ」


ヒロ「だっはっは!バレたか。トビアスもよく『見てる』な?いいぞー」



…俺、この前からちょっと気になってたんだ。ヒロおじいちゃんが『見る』って言う度に、なんか周囲の空気が震える気がするんだよね。でもマナじゃないから…ああ、ヒロおじいちゃんてもしかして『見る』ってことにカリスマが発動すんのかな。


ジグおじいちゃんはこういう現象はなかった。俺たちといない時に、他の事象で発動すんのかなあ。カリスマって不思議だよねー、ワケわかんないや。


俺がボンヤリとそんなことを考えてたら、側近の人が「閣下マイロード、おいでになりました」と控えめに伝えに来た。ヒロおじいちゃんは側近の人に無表情で「通せ」と言う。そっか、ヒロおじいちゃんはユリウスみたいにスイッチの切り替えが早い人なんだな。側近の人、きっとヒロおじいちゃんのあったかい笑顔見たことないんだろうなあ。



トビ「ヒロじいちゃんマイロードとか呼ばれてんの?すげー」


ヒロ「…言うな。俺もあれはイヤなんだ」


アル「何でヒロおじいちゃんが道路なんだろ。おじいちゃんインフラ整備が得意なの?」


ジグ「アルノルト…お前、天才なのか阿呆なのかどっちかにせい」


トビ「お前の成績SSって絶対何かの間違いだな。roadじゃなくてlord。支配者って意味だろ…」


ユリ「失礼いたします。…急にお呼びになるから何かあるなーとは思ってましたが、これは意外な組み合わせですね。こんにちは、アルノルト」


アル「あれっユリウス!」


トビ「 ! あ、お前が言ってたぬいぐるみの人か?」


アル「そうそう。シュピールツォイクで会ったんだ。久しぶり~」


ジグ「やっぱりお前ら知り合いだったか。ユリウス議員、儂の眉間に関してアルノルトに吹き込んだだろう…」


ユリ「私は何も言ってませんよ?アルノルト、ジギスムント翁に何言ったの?」


アル「怒りんぼだから眉間のシワがすごいんだよ、笑ってって言った」


ユリ「ぷふ…ジギスムント翁、私のせいではないでしょー。それだけ翁の地脈が素晴らしいってことですよ」ニコ!


トビ「えーと…ユリウスだっけ?お前も煽るなあ…ジグじいちゃん、そりゃ真剣に仕事してきた男の勲章だし年輪みたいなもんだろ。気にすんなよ」


ジグ「…お前はようわかっとる、トビアス。おいヒロ、やっぱりこいつらを儂に預けろ…!」



…ヒロおじいちゃんは俺たちの会話を聞いて、体を丸めて笑っていたので返事ができなかった。






*****





ヒロおじいちゃんは笑いの発作がおさまると、フッと少しだけ気配を変えてユリウスに話しかけた。



ヒロ「ユリウス、どうだった」


ユリ「…各色に異変はありません、部族反乱ではないでしょう。可能性があるのは国外、もしくは紫紺内に反政府の派閥でもできたかもしれませんね」


ジグ「紫紺内と限られるのか。理由は?」


ユリ「移動手段です。アルノルトとトビアスが見つけてくれた刺客の死体を攫った連中、短時間で100km以上移動していたんだって?魔法部と軍部へも問い合わせましたが、現在確認されている移動魔法は紫紺のものと遁甲しかありません」


アル「…その話だったんだ。あのさ、遁甲の可能性は考慮しなくていいと思う。俺とトビアスは遁甲をがっつり味わったからね、あんな気色悪い気配があれば絶対わかる。あの後バーデン・ヴァルトを歩いたけど、そんな痕跡なかったよ」


ユリ「…となると、紫紺内で移動魔法を所持している者。もしくは…デミでしょうね」


トビ「何でデミが出てくるんだ」


ジグ「紫紺の中にも没落していく家はある。そうすると一番手っ取り早く大金になるのが移動魔法なんでな。闇市場で出回ることがあると報告を受けておる」


トビ「あー…そういうことか…」


アル「デミだったら困っちゃうね。目的がわかりにくいんじゃないの?真犯人がお金積んでデミの連中を雇ってるかもしれないんだしさ」


ヒロ「まあな。だが目的をいちいち判明させていては埒が明かん。俺のような立場だとな、恨まれたり命を狙われる理由なんてのは、見当もつかない八つ当たりまで含めて星の数だ。目的はこれに決まっていると思い込んでいたら、別の勢力だったなんてこともあるんでな。先入観はいらん、迎撃するだけだ」


ユリ「ま、長様を狙うと言うのはこの国を狙うのと同義なわけですから。売られた喧嘩は即購入して遊び倒す。それがベストでしょう」


トビ「…遊び倒すとか余裕かよ…いたぶるの間違いじゃねえの」


アル「ねーユリウス。それにしたってあいつらさあ、北へ逃げたってどういうことかな。俺一瞬、レインディアに逃げたかと思ったよ」


ユリ「さあねえ。ただ、北はレインディアが攻めて来やすいから町や村が少ないでしょ?それで一旦そちらへ逃げたとも取れるし。ま、これ以上は軍の仕事だ。私は部族間で何か動きがないか確認しただけだからね」


ジグ「アルノルトとトビアスが作った魔法があってな。ユリウス議員に詳細は行っているか?」


ユリ「はい、見させていただきましたが。二人ともすごいね、あんな高性能なものを作れるなんて」


アル「あ、あの追跡魔法?うひひ、スゴい~?」


トビ「アルノルト、いまそんな軽い話題じゃねえだろ…」


ジグ「あれで確認してみたが、中央にも赤の光点はポツポツあってな。逆にどれが今回の敵だかわからんわ。まあ、そのデータをまとめて護衛が虱潰しにチェックできるってのはありがたいがな」


トビ「そうか…八つ当たりも含めて星の数、か」


アル「うー、あの時マナ固有紋を取れていればぁぁぁ…」


ヒロ「まあそう考え込むな。ユリウスもご苦労だったな、その話も含めてこいつらと会わせて楽しもうと思っていたんでな」


トビ「やっぱりな。なんでジグじいちゃんが長じゃねえんだ?俺はこの国の行く末が心配だぜ」


ユリ「やめてトビアス…翁がトップだと、私が息のできない状態になるから」


アル「ジグおじいちゃんが長じゃなくて正解なんじゃないの。それ以上心配事が増えてシワが深くなったら顔が真っ二つに割れちゃうよ」


ヒロ「…ぶふぅ…そう…だぞ、俺はジグの脳天が割れないように長を引き受けてやってるんだ…ぶっふー!」


ジグ「…お前らいい加減にせんと呪うぞ…」



ジグおじいちゃんの顔は濃い陰影が放射線状に広がり、プルプルしていた。ほんっと怒りんぼだなあ。まあ元気そうだからいっか。


俺とトビアスはじゃあねー帰るねーと言って立ち上がり、「そだ、ユリウスのポム見せてよー。あのワンコ可愛いよね」と何気なく話題を振る。ユリウスも「どうぞ、執務室にいるから寄っていく?」といいながら一緒に官邸を出た。


三人でどうでもいい話をしながらユリウスの執務室へ入り、防諜方陣を展開して…



ぶっはぁぁぁぁぁぁ…



と息を吐いたのでした。


ああ、ほんのちょっと演技を混ぜるのってムズかしい。





  


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