表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Three Gem - 結晶の景色 -  作者: 赤月はる
虹の輪舞曲
389/443

388 明るさをもたらすのは誰 sideニコル







五月のとってもきれいに晴れた日のこと。アルも白縹の村へ戻り、以前のように放課後には毎日猫の庭へやってきます。やっと全員揃った感じがして、皆が明るい笑顔になっていました。


フィーネ姉さんもアルが来ると柔らかい笑顔。もうすぐ結婚するので一緒に家具を買いに出かけたりと、デートまでして絶好調です。その度にアルがうっきうきで、無いはずの尻尾がブンブン振られているのが見える気がするよー。


デートを終えて帰ってきたフィーネ姉さんはナディヤ姉さんと和やかに話し、アルは皆に混ざって子供たちと遊んだりしていました。一階でそんな風に楽しんでいると、リア先生もやってきます。そろそろ出産予定日なんですが、いつものようにしおりを挟んだ古書を持って上機嫌。



リア「ふー!お腹重いわー」


ユッテ「リア先生、そんな分厚い本持ってウロウロすんなし…キツいなら手伝うから言ってよー」


リア「何言ってるのよ、そんなこといちいち頼んでたら誰かが一日中張り付くことになっちゃうわよ~!ヘーキヘーキ、本のためなら苦労なんて思わないってば」


ニコル「 …? リア先生、守護が『産院に連れて行く』って言ってるんだけど…」


リア「は?何でかしらねえ」


ナディ「…リア、額に汗が浮かんでるわ…お腹が張ってたり痛かったりする?」


リア「ん?ん~…少しだけね!臨月なんだから当たり前でしょ」


フィ「…リア?その本、オスカーにわがままを言って昨日買ってきてもらった古文書だね?」


リア「え、その…まあね、さすがに古書店には行けないから頼んだだけよ!」


アルマ「…等間隔に痛みが来てると思うよォ、これ…アルに接続したら波が大荒れ…」


マリー「…リア…?私たちにウソつけると思ってるのぉ…?」


リア「…ちょ…まだ平気だってば、まだ三分間隔くらいだしー!」


全「出るわぁぁぁぁぁぁ!!」


リア「私の『降霊魔術書ネクロマンシー・グリモワール』がぁぁぁ」


全「そんな胎教に悪いもの読むなぁぁぁぁぁ!!」



…守護でリア先生を産院へ搬送です。初産とは思えない早さで生まれたのは、可愛らしい黒髪の女の子。少し鋼色のような不思議な色合いの髪も、鮮やかな黄色の目もオスカーそっくり。



ニコル「おめでと~!オスカーそっくりだね、この子」


ユッテ「頼む…中身もオスカー似でよろしく…」


アルマ「でもこの子…鼻筋とか顔の造作はリア先生そっくりな気がするぅ。美人になるよぉ」



オスカーは生まれたばかりの赤ちゃんを抱いて、なんだかガチゴチになってる。わかる、わかるよぉ…壊しそうで怖いよね!少しするとリア先生を見て、オスカーは涙声で言った。



オスカー「ありがと、リア」


リア「いいってことよ~…さあ、私に『降霊魔術書ネクロマンシー・グリモワール』を…」


全「…」



オスカーは「俺がしっかりこの子を見てなきゃ…」と責任感と重圧感にまみれた顔をしました。マリー姉さんが「何言ってるの、ナディヤがいるんだから大丈夫よぉ」と明るく言ってオスカーの気負いを失くそうと焦り、フィーネ姉さんは「リア、君は少し本から離れる日を作ってもいいと思うのだよ。休肝日ならぬ休本日をだね…」と呆れたように諭します。


そして最終兵器ナディヤ姉さんが起動しました。



ナディ「…リア?あなたが三日間入院している間に…お部屋がすっからかんにお掃除されないといいけど…ね?」にこ!


リア「わわわわわかりました!クレアが大事!クレアが一番!」


ナディ「あら…わかってくれたのね、嬉しいわ」


フィ「え…えーと…いい名前を付けたね、リア!クレアとは古語かい?」


リア「そうよ~、ルカとレティに引き続いて『明るさをもたらす』子!私みたいに明るい子よ!」


ニコル「きっとオスカーみたいに前向きで優しい明るい子になるよ!」


アルマ「そうだよねぇ~、オスカー似の真面目で明るい子になるよぉ」


ユッテ「頭のデキだけリア先生でもいいけど、他は全部オスカーで!頼むクレア!」


リア「ちょっと…私の可愛い娘よ、私に似るに決まってるでしょー!」


オスカー「はいはい、クレアはリア似だよ。大丈夫大丈夫」


リア「分かればいいのよっ」


全「…」




こうして猫の庭に、八人目のちびっ子がやってきたのでした。三日後にクレアと共に退院してきたリア先生は「クレアまみれの生活もいいわね!」と言って紙媒体の書籍をしばらくがまんし、ヘルゲが作ったリストバンド型のブックリーダー(小さなフォグ・ディスプレイで本を読むもの)で書物を読んでいます。


クレアのお世話はきちんとしているし、愛情たっぷりのいいお母さんなんですが…本を読みたいがためにブックリーダーを見ながらおむつ替えなどという荒業を身につけたり、いつもどおり斜め上の行動が見受けられました。


その度オスカーが溜息をつきながらクレアのお世話をし、こちらはほんとに娘にメロメロのお父さんって感じで愛しそうにクレアを抱きます。レティが生まれた時のアロイス兄さんみたいだな~、オスカーってば。


でもわかるんだよねぇ…私もスザク可愛くて仕方ないし。猫の庭は赤ちゃんがいっぱいいて、きっとこれからもっと賑やかになるね。フィーネ姉さんはすぐ子供を産むつもりだって宣言してるし。んふふ~、男の子と女の子、どっちかな!そうすると子供が来年には九人になって…楽しみだなあ、ほんと。




あれ?


私、この前生理来たの…いつだったっけ。


あれえぇぇぇぇぇぇ!?






  

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ